そして前回、第5回の講義にいらっしゃったのは、東京農工大学農学部で環境倫理学や科学技術社会論を研究しておられる鬼頭秀一先生でした。鬼頭先生の講義では、「いったい誰が決定するのか」という問題提起をした上で、様々な具体例にふれながら、持続的な社会を実現するための方法としてローカルな範囲での自発性が重要なのではないかということを講義していただきました。
持続的な社会を実現するための方法として上からの1元的な管理と、ローカルな社会での自発的な決定が考えられます。1元的な管理による問題点は、強制によって自由が抑圧されてしまったり、マイノリティの声が無視されてしまうということです。これに対して構成員の自発性に基づくローカルなシステムでは、自分自身に関係する事柄は自分達で決めることができ、そうやって決まったことは、構成員の関係性によって規制しうるものとなるのです。
人間と自然のかかわりを持続させていく社会では、宗教的・文化的リンクと経済的・社会的リンクは切り離せないものです。現在のような、宗教的・文化的リンクだけを重要視した自然保護や、経済的・社会的リンクだけからみた自然からの資源の収奪では、自然と人間が分断された関係、いわゆる切り身の関係です。そうではなくて、人間と自然の双方向の関係、いわゆる生身の関係が重要です。こういった考えはコミュナリズム、共同体主義といわれており、人間と自然の二分法を超えた概念として強調されていました。
また環境持続性だけではなく、社会的公正と存在の豊かさというものも考えなければなりません。持続可能な社会の中でどういうふうに豊かに生きていくのか。いま、何が豊かなのかということを問い直すことが必要です。
環境の持続性を考えるときに、重要なのは一元的な管理ではなくて、ローカルな管理、意思決定なのです。
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