2 人間と自然との関係性の永続可能性はいかにして可能か?
2−1 人間と自然の二分法と一元的管理
近代の考えかたは、人間と自然を完全に二つに分けてしまうことで、自然からの被害(例えば猿による、畑荒らし)を防いだり、原生自然を保護していこうという運動が盛んであった。例えばこの考え方のひとつゾーニングという考え方がある。ゾーニングとは原生自然(自然圏)と人間(人間圏)を完全に分けてしまい、その間に人間も自然も一緒に存在するBuffer Zoneを設ける、といった方法である。 しかし人間も自然も豊かに生きていくには人間の自然への介入が不可欠である。そのような考え方がリオサミット以降、環境倫理思想で進められてきた。
人間と自然の二分法脱却の環境倫理思想の流れ
- 人間中心主義の脱却
- 環境的正義
- 原生自然保護の見直し
- 二次的自然への関心
- 多様性保護にかかわる生命地域主義的アプローチ
- 生活/生業への関心・生活環境主義等の思潮の重要性
環境的正義(environmental justice アメリカ)の四つの構成要素とそのグローバル化
- 問題――差別の結果として不公正な形で環境的負荷を受ける
- 原因――深刻な健康の被害が共同体居住者に
- 解決――環境的正義による
- 権利――
- 実質的権利=汚染のないところで暮らす権利
- 手続き上の権利=民主的参加と自己決定の権利
- マイノリティが環境における権利の侵害
- 生存の権利の侵害
- 環境的正義による解決
- 実質的権利だけでなく、手続き上の権利(参加と自己決定)の重要性
2−2 人間と自然の二分法を超えて―――コミュナリズム(共同体主義)へ
今まで見たきたように、自然と人間を分けてしまう考え方ではなく、自然と人間の共生が必要になってくる。このような考え方に共同体主義というものがあげられる。
管理主義・保護主義ではなく、共同体主義をとることにより、人間と自然の関係性を断続的なものから連続的なものへの移行させ、自然保護から、自然を利用し、かかわりをもつようにするべきである。
里山の保全や、社会的・経済的リンクと、宗教的・文化的リンクは不可分であり(社会的リンク論)、精神的豊かさの意味があることを念頭においておく必要がある。
|