環境の世紀VII  [HOME] > [講義録] > 6/2 「インターミッション−中間総括」環境三四郎[2]

HOME
講義録
教官紹介
過去の講義録
掲示板
当サイトについて


講義録



環境三四郎による中間総括

インターミッション
−中間総括

  ※環境三四郎による、4・5月の講義の
   大きな流れをまとめた中間総括です。

キーワードによる各講義の理解

 さてこれまで講義の大まかな流れを振りかえってきたのですが、その中から環境三四郎が選んだキーワードをいくつかあげようと思います。ここでは、同じキーワードでも、先生によって使われる意味が違う場合もあるので、そこに注意してほしいと思います。




石谷久
 講義録教官紹介
中西徹
 教官紹介

解決策の全体性

 まず1つ目は解決策の全体性です。石谷先生の講義では技術はそれだけでは不十分であり、経済・政治的な側面も考える必要があるということを話していただきました。中西先生の講義の中では、環境保全と貧困緩和は切り離せない関係にあるということでした。







石谷久
 講義録教官紹介
武内和彦
 講義録教官紹介
中西徹
 教官紹介
鬼頭秀一
 講義録教官紹介

インセンティブ

 2つ目のキーワードはインセンティブです。人間が行動するときの、動機やきっかけとなるものをインセンティブと言います。

 石谷先生の講義の中では、エネルギー問題では、技術的にはいろいろな解決策が考えらても、経済的な側面でのインセンティブがないとその解決策は実行できない、といった形で出てきました。技術が使われるように経済的・政治的なインセンティブをいかに高めるかが必要です。ひとつの案として、技術や被害をコストというかたちにして経済的に評価することが必要だといわれていました。

 武内先生の授業でも、直接インセンティブという言葉は出てこなかったものの、昔の人々が里山を管理していたのは、木材や下草を薪や炭、または肥料として使うというインセンティブが働いていたからだと言えると思います。それでは、薪や炭を使うことがなくなった現在、どのようにして、人々の里山管理に対するインセンティブを働かせればよいのでしょうか? まず、企業や政府には、バイオマスとして木材を利用するというインセンティブが、そして、市民には、世話をすることによって、花が咲いたり、日常生活から離れて、自然と触れ合うことができるというインセンティブが働きうるのではないでしょうか。

 中西先生の講義の中では、インセンティブを付与することによって、問題の解決に向けての行動が保証されるようになるというものでした。

 鬼頭先生の授業では、ローカルな社会において決定されたことは、自分達で決めたことなのだから、きちんと守ろうと思うようになり、いわば自発性によるインセンティブが働くことになるのです。







武内和彦
 講義録教官紹介
鬼頭秀一
 講義録教官紹介

二次的自然

 3つ目は二次的自然です。人間の働きかけによって変質した自然を原生自然と区別して二次的自然といいます。

 武内先生の講義の中では人間と自然は連続であるということ、そして二次的自然は原生自然と人工的自然の間にあるものということでした。そして二次的自然は人間が手を加えることでその生物多様性を増すことができ、人間も、自然を資源として利用することができるということでした。

 鬼頭先生の講義の中での二次的自然、里山は人間と自然をつなぐものでした。持続させる対象は自然そのものではなく、自然と人間のかかわりあいだ、ということを話していただきました。昔ながらの人間と自然の生身の関わりあいに学びながら、現在の切り身の関係を見なおす必要がある、ということでした。







武内和彦
 講義録教官紹介
鬼頭秀一
 講義録教官紹介

ローカルなシステム

 4つ目のキーワードとしてはローカルなシステムが考えられます。鬼頭先生は、対策の意思決定をするのに、ローカルなシステムが重要になるとおっしゃっていました。

 武内先生の講義では、ローカルな団体による里山の管理などが必要だということでした。例えば、多摩丘陵の森林を多摩ニュータウンの人たちで管理していこうという動きです。

 また、これから見ていただくビデオ(注)も、ローカルマネーのことを扱っており、ローカルなシステムがポイントとなっています。

     注)講義の後半ではローカルマネーに関するビデオ「エンデの遺言」を見ました。







武内和彦
 講義録教官紹介
鬼頭秀一
 講義録教官紹介

参加

 最後のキーワードは参加です。多くの講義の中で人々に求められていたのは参加です。

 武内先生の講義の中では、二次的自然を維持させていく主体として市民というものが出ていました。

 鬼頭先生の講義の中の市民は、ローカルな社会を自発的に担うものとして提示され、また政策決定の場にそこに住んでいる人が参加することで環境的正義が守られるという点も指摘されていました。




 以上、「解決の全体性」「インセンティブ」「二次的自然」「ローカルなシステム」「参加」の5つが、私達が選んだ前半の講義のキーワードでした。私たちがこれらのキーワードを挙げた理由を最後に説明したいと思います。

 お分かりのように、同じキーワードでも、先生によって使われ方が違っていました。違う学問分野の間でも、共通するキーワードを切り口に話をすることができますし、一つの分野に固執することなく、興味のある分野を相対的に見ることができるというメリットがあります。そういった視点こそが、環境問題を考えるうえで、重要なのではないかと考えたからです。後半の講義でも、これらのようなキーワードを皆さん自身でもいくつか見つけ出すことによって、講義の整理がしやすくなるのではないかと思います。

2000/6/2 環境三四郎



Back
Top
Back Next