その他、生協で使用された段ボールや古紙は100%回収され、再生紙の原料となっていることも特筆に値するでしょう。
このように、学内廃棄物のリサイクルの多くを生協が担っていることが分かると思います。以上、生協ルートで処理されている廃棄物の流れを追ってみました。
続けて、生協内部での環境対策の意思決定について述べます。
ここでは2つ言及しておきます。
- 生活環境プロジェクトの存在
- 組合員の環境対策への意思の反映
順を追って解説しましょう。生協では現在、大学と協力して、廃棄物の総量抑制に取り組んでいます。
その方針の中で、生協の環境対策の中心になっているのが生活環境プロジェクトです。これは生協理事会のもとに設置されており、理事会の諮問に答申するという形で環境対策を考案しています。提案されたプロジェクトは理事会の承認の下、生協全体で実施されます。その意味で、このプロジェクトは一種のシンクタンクと言えます。構成員を見ても、教職員・学生・大学院生・生協従業員など、大学を構成する全主体が10数名メンバーになっています。環境対策を一括して取り扱い、かつ具体化する機関が設けられているのは高く評価できるでしょう。ただし、後でお話しする環境委員会など、学部の意思決定機構とのつながりはなく、あくまで生協として取り組める対策を考案していることには注意が必要でしょう。
さらに今後は、会計監査のように、生活環境プロジェクトが実施したプロジェクトを第3者が事後評価する「環境監査委員会」を設ける構想があるそうです。生協側では、環境を専門にしている教員と学生の組合員を委員として想定しています。具体的には、現在生活環境プロジェクトが発行している環境事業報告書を基に、必要な助言や提案を環境監査委員会が行い、次年度以降の活動に活かしていくという内容のものです。
最後に、生協という組織の性格について触れておきます。生協(消費生活協同組合)は決して、義務としてリサイクルを行っているわけではありません。むしろ、大学をリードする形で、積極的にリサイクルなどの環境対策を進めてきたといえると思います。
その背景にあるのは、生協は「組合員の生活をより良くする」ために存在しているという職員の方の一貫した意識からです。だからこそ、全組合員の意思は最大限尊重されます。一言カードに見られるように生協全体の意思決定に組合員が個人として参加できるのです。環境対策もこの延長で行われていると考えると分かりやすいでしょう。つまり、私達が生活を改善していく延長に、環境問題があるという意識が組合員の中から生まれた結果、今のリサイクルが行われているのです。
以上、生協ルートとして、生協の処理している廃棄物の流れと生協内の意思決定についてお話しました。
3−3 廃棄物収集に関わる主体
さて、これで駒場キャンパス内における生活系廃棄物の流れ、すなわち学部ルートと生協ルートについて理解していただけたでしょうか。モノの流れがつかめたところで、次は駒場キャンパスにおけるこの廃棄物回収システムはどんな人や組織によって担われているのかを考えてみましょう。これまでに登場したのは経理課用度掛と清掃業者と収集運搬業者、そして生協でした。このほかにはどのような主体が駒場における廃棄物回収システムに関わっているのでしょうか?主に学部ルートについて見ていきたいと思います。
3−3−1 環境委員会と用度掛
廃棄物処理の関係主体をまとめた以下の図中で、まだ触れていないのは環境委員会です。環境委員会というのは、教養学部の10人弱の教官から構成される委員会で、駒場キャンパスの環境全般、廃棄物や廃水の問題からキャンパスの景観や美化の問題まで、幅広く扱っています。いうなれば、駒場の環境に関する意思決定機関と言うことになるでしょうか。
この環境委員会と第2章でも出てきた経理課用度掛とが駒場キャンパスにおける廃棄物処理に関する意思決定、システムの設計に非常に大きな権限を持っているのです。それでは、次にこの経理課用度掛について少し詳しく見てみましょう。
経理課用度掛はその名前から分かるように大学の事務を担当している部署の一つであり、用度掛には7〜8人の事務職員の方がいらっしゃいます。用度掛の仕事内容は、学部内で使われる様々な物品を購入したり、業者と契約したりすることであり、廃棄物関係では構内のゴミ箱・ゴミ集積倉庫の設置や清掃業者・収集運搬業者との契約を行っています。従って、用度掛の人に伺ったところでは、本来の業務の性格は、分別項目の数などの廃棄物処理システムを決めたりすることではなく、システムの運用に必要な資財や業者の手配であるということです。しかし、ゴミ箱・ゴミ集積倉庫や清掃業者・収集運搬業者の手配という廃棄物処理と直結する仕事を扱っていること、また廃棄物に関して扱っている大学事務の部署が他にないため、廃棄物処理システムの設計という作業も用度掛が行っているということです。
廃棄物処理の関係図
3−3−2 各主体間の関係
上の図にのっている主体間の関係について見ていきましょう。
まずは環境委員会と経理課用度掛の関係についてです。環境委員会と用度掛は、今述べたように駒場のシステムの設計に大きな権限を持っているので、この2者の関係のあり方はなかなか重要であると言えるでしょう。
環境委員会は意思決定を行って、用度掛に指示を出すことができるという点で、非常に権限は大きいのですが、委員である教官の方も当然のことながら、自分の研究や授業などで忙しい場合が多いため、実際には用度掛が意思決定を行っている場合も相当あるようです。用度掛は環境委員会から指示があれば、実務的作業を行うことになります。多くの作業を事務方がこなしているという点では、たとえば政府と省庁の関係に近いかも知れません。
次に、用度掛と清掃業者・収集運搬業者との関係です。業者との契約は用度掛が行っているのですが、ここは国立大学と言うことで、契約の際には入札が行われ、最低価格で入札した業者が1年契約で業務を引き受けることになります。従って、用度掛が雇用者、清掃業者・収集運搬業者は被雇用者ということになります。入札が行われると言うことは、毎年業者が代わると言うことも考えられるのですが、入札に参加するには毎日回収に来られるなどの最低限の条件を満たす必要があるため、基本的には清掃業者は1社、回収業者も2社程度に絞られているようです。
また、特に清掃業者の方は、現場から見た問題点を抱えており、その問題点について用度掛、あるいは環境委員会に改善を求めたりもしているそうです。たとえば、先ほども出てきたように、ゴミ集積倉庫がすぐにいっぱいになってあふれてしまうというのが、清掃業者の方にとっては大きな問題なのですが、用度掛に倉庫を新たに設置するよう、長い間相当強く要望してきたそうです。最近になって、ようやく倉庫の増設が決まったようなのです、なかなか現場の声が生かされていないというのが実状のようです。
続いて、用度掛・環境委員会と生協との関係です。前節で廃棄物の流れには学部ルートと生協ルートがあると言うことを述べました。収集運搬業者との契約などはそれぞれが独自にやっており、そういう意味では別々に動いていると言えます。しかし、ビン・缶やペットボトルのリサイクルについては、学部管理のゴミ箱に投入されたものも生協ルートでリサイクルに回すことになっていたように、お互いに協力できることについては協力して対策を行っているようです。
さて、それではこの章の最後に私たち環境三四郎とこれらの主体との関係・つながりを少し見てみましょう。環境三四郎では、環境委員会の教官の方や生協に対して提案をするというかたちで、いくつかの対策を行ってきました。例えば、講義棟内のゴミ箱に貼ってある分別表示を作成したり、生協のコピー機に両面コピーを呼びかける表示を貼ったりしてきました。また、清掃業者の方にお世話になって、試験期間中に大量に出るシケプリを回収・リサイクルすると言うことも行ってきました。
以上、駒場キャンパスにおける廃棄物処理システムを関与している様々な主体について、その間のつながりを中心に見てきました。次の第4章では、駒場の廃棄物処理制度について各主体の「立場」と「役割」の側面からまとめ直したいと思います。
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