環境の世紀VII  [HOME] > [講義録 > 6/16 [事例研究─駒場キャンパスにおける廃棄物問題について] > 第2章

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廃棄物処理の一般的知識


田中



 環境庁
「topics」の「循環法」に循環型社会形成推進基本法の解説があります。

 厚生省の法令検索
厚生省の法令検索すると条文を読むことができます。
目次検索→第5編の生活衛生→第5章環境整備→第1節廃棄物の処理及び清掃 の順で廃棄物処理法にたどり着きます。

 容器包装リサイクル法データベース

2−1 始めに

 この章では、社会全体に適用されている一般的制度としての法制度を紹介します。そのうち駒場キャンパスには適用されている法制度について着目したいと思います。こうした制度として該当しそうなのは、法律や条例です。下の図では各法令の上下構造とそれぞれに対応する法令についてまとめたものです。

法制度の構造と諸法規の対応
法制この構造と諸法規の対応



2−2 法律

 廃棄物処理に関する法律として駒場キャンパスに適用されているのは、上図に挙げた3つの法律です。

 第1は廃棄物の処理全般を定める「廃棄物処理法」です。廃棄物の定義や分類・処理方法責任の所在など廃棄物処理の根本が定められています。

 第2はリサイクルに関する法律で、これには「再生資源の促進に関する法律」と特別法である「容器包装リサイクル法」が該当することが分かります。

 なお、こうした法律の頂点にあるのが、始めに紹介した「循環型社会形成推進基本法」です。

 では、廃棄物処理法・リサイクル法・容器包装リサイクル法が具体的にどのような制度を与えているか順番に見ていきたいと思います。廃棄物処理法が定めているものとしては、

  1. 廃棄物という概念
  2. 廃棄物の分類
  3. 廃棄物の処理方法

 の3つです。

2−2−1 廃棄物の定義

 一般に、法令上の定義によって曖昧な対象は客観的に解釈できるようになります。しかし、殊に「廃棄物」という概念に限っている言うと、法律でも曖昧な定義がなされています。

廃棄物の根本的な定義を定めているのは廃棄物処理法の第2条第1項です。

ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの

 廃棄物行政について管轄する立場の厚生省では、この規定を廃棄物を例示したものに過ぎないとし、概念を規定しているわけではないとの見解を取っています。廃棄物という概念を明文で規定しているのは、厚生省が1971年に出した通達(厚生省環境整備課長通達)です。

廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意志、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない。

 「占有」は、所有しているか否かに関わらず実際に物支配していることを言います。客観的に「不要になった」とみなされても、廃棄物になるか否かは占有者の主観によるとされたのです。このように、占有者の意思が重要視されたことで、ある主体にとっては「廃棄物」であるものが、別の主体にとっては「廃棄物」ではないという事態が生じることがあります。第1章で触れた、香川県豊島の産業廃棄物の不法投棄問題はこの典型例といえるでしょう。この点については、今回の調査の趣旨とは直接関係はありませんので、ここではこれ以上触れませんが廃棄物問題の本質を考える上で、重要な示唆を含んでいます。例えば、教室にまかれている大量のビラを考えてください。まだ、誰も読まない状態で机に置いてあるビラは、この定義によると廃棄物だといえるでしょうか。それとも言えないでしょうか。

2−2−2 廃棄物の分類

 次に、廃棄物の分類について廃棄物処理法はどう定めているのでしょうか。ここで廃棄物の分類を取り上げる理由としては、廃棄物の分類によって、廃棄物を処理する責任を負う主体と処理方法が変わってくるからです。この点については後で触れます。

 下図を見てください。廃棄物は排出者によって大きく2種類に分けられます。

廃棄物の分類と処理体系
廃棄物の分類と処理体系

 第1は事業者が事業活動に伴って排出する産業廃棄物であり、第2はそれ以外の廃棄物である一般廃棄物です。産業廃棄物は事業活動に伴って生じる廃棄物のうち廃プラスチックなど法令により定められている19種類のものを指します。ですので、事業者が出す廃棄物(以下事業系廃棄物と呼ぶことにします)には、産業廃棄物と、事業系廃棄物のうち法令で定められていないものである事業系一般廃棄物の2種類があります。さらに事業系廃棄物以外の一般廃棄物が、いわゆる生活系一般廃棄物と呼ばれるもので、皆さんの家から出しているゴミがこれに該当します。

新海面処分場
 厚生省生活衛生局水道環境部の調べ

 以上のように廃棄物には大まかに3種類があることを理解していただけたと思います。ちなみに1996年度の日本全国の一般廃棄物の排出量は5115万トンで、産業廃棄物の排出量は4億2600万トンでした(厚生省生活衛生局水道環境部の調べ)。

2−2−3 廃棄物の処理責任と処理方法

 一般廃棄物と産業廃棄物で大きく違うことは、上図にもありますように、責任を持って処分すべき主体が異なることです。

 一般廃棄物は各市町村が運搬及び処分することが法律で義務付けられています。一方産業廃棄物は、各事業者が「自らの責任で適正に」処分しなくてはなりません。

2−2−4 事業者の概念

 ちなみに、事業活動とは、厚生省の通達によって、「単に営利を目的とする企業活動にとどまらず、公共的事業をも含む広義の事業活動」であるので、教育や研究も事業活動に含まれています。このため、東京大学教養学部が、全体として事業活動を行う事業者となっています。従って、駒場キャパス内で発生する全ての廃棄物は、事業系の一般廃棄物か産業廃棄物に分類され、学部又は生協適正に処理する責任を負います。例えば、生協で何かを買ったときにもらうビニール袋は、産業廃棄物の廃プラスチックに該当します。

 後述するように、これらは東京大学教養学部又は生協が費用を拠出して、適正に処分するということになっています。

 この他、事業系一般廃棄物・産業廃棄物の区別無しに、アルミ缶やスチール缶など特定容器・包装に該当するものは、容器包装リサイクル法により、分別収集と再商品化が義務付けられています。




2−3 条例





新海面処分場
 東京都廃棄物条例

 次に、条例の適用について考えてみたいと思います。言うまでもなく条例とは、都道府県・市町村・東京23区など地方公共団体(地方自治体ということもある)が、法律の範囲内で、地域の特性に合わせて、定める「制度」です。従って、駒場キャンパスにおいても、直接法律が適用されるというよりも、条例を仲介して適用されていると考えたほうが良いと思います。駒場キャンパスであれば、 東京都や目黒区が定める条例(東京都廃棄物条例)が直接適用されます。

 条例によれば、駒場キャンパス全体の産業廃棄物管理責任者を選出しなくてはなりません(東京都廃棄物基本条例14条)。対外的には、生協と教養学部合わせて駒場キャンパス全体が1事業者とみなされています。従って、この管理責任者には教養学部長が選任されており、産業廃棄物の処理計画を作成し、知事に提出することになっています。法律のところでこの計画が駒場キャンパス内の廃棄物処理体制の根拠になります。キャンパスという空間は、法令上事業用大規模建築物とみなされるので、事業系廃棄物であっても、産業廃棄物とは別に再利用計画を作成し、目黒区に提出することになります。現在は、教養学部経理課用度掛が両方の計画を一括して作成しています。1999年度の教養学部全体から排出された事業系一般廃棄物は584トンに、産業廃棄物は年間226トンに上るそうです(経理課用度掛の方の話より)。

 しかし、この計画を基に処理及びリサイクルについて学部がイニシアティヴを発揮するということはなく、1999年度の駒場キャンパス全体のリサイクル率目標は30%だったそうですが、実績は3〜4%に留まったという話でした。皆さんも、この大学が目標としてリサイクル率30%を掲げていたことはご存知ないでしょう。

 ここまでのところで重要なのは以下の2点です。

  • 東京大学教養学部は1事業者として、学内で発生する廃棄物につき、自ら適正に処理する責任を負っていること
  • 廃棄物の処理及び再利用は目黒区に提出する計画に基づいているが、実際には計画が目標としての機能を果たしていないこと



2−4 東京都にける廃棄物処理の現状

 最後に駒場キャンパスから排出された廃棄物がどこに行くのかということを説明します。これまで見てきた法制度に従って、それぞれの廃棄物が具体的にどのような分類を受け、どの主体がどのように処理をしているかは第3章に譲るとして、第2章では最後に、東京における廃棄物処理の現状というものに触れておきたいと思います。

 我々が出したゴミはいったいどこに行くのでしょうか。

2−4−1 廃棄物処理制度

 東京都の廃棄物行政は、東京23区と多摩地区の2つに大きく分けて行なわれています。先ほど言いましたように一般廃棄物については、市町村に処理責任があります。特別区23区については4月までは東京都が代行してきた市町村の業務が今年の4月に全て特別区に移管されました。

新海面処分場
 東京二十三区清掃一部事務組合

 現在、一般廃棄物に関しては特別区が共同で処理に当たっています。ここでは、東京都特別区から出された廃棄物について述べたいと思います。

 特別区からから排出される生活系一般廃棄物は、現在のところ

  1. 可燃ゴミ
  2. 不燃ゴミ
  3. 資源(古紙・ビン・缶)

 の3分別で処理されています。ただし、特別区への移管に伴い今後分別体系が変更される可能性は十分あります。さらにこれに事業系一般廃棄物・産業廃棄物が分類として加わりますが、詳細は後述しす。これらの廃棄物はいずれも中間処理を経て最終的には埋め立てられることになります。生活系一般廃棄物の処理方法は以下のとおりです。

ゴミ処理場の位置
新海面処分場
 新海面処分場
1.可燃ゴミ
特別区が共同で管理する清掃工場で焼却された上で、新海面処分場に埋め立てられます。
2. 不燃ゴミ
焼却されずに、京浜島と中央防波堤にある処理センターに持ち込まれ、そこで圧縮・破砕などの中間処理を受けます。こうした中間処理によって減容した不燃ゴミは、同様に新海面処分場に埋め立てられています。
3. 資源
委託された各区か又は委託された再生利用業者が回収し、再資源化しています。ただし、不燃ゴミに混入した資源は、上で挙げた京浜島と中央防波堤の不燃ゴミ処理センターで再分別されることになっています。

 事業系一般廃棄物も収集と運搬を各事業者が自ら行なう場合と、委託して行なう場合を加えれば、基本的には生活系一般廃棄物と同じ処理ルートをたどります。

 産業廃棄物の多くは、東京都の外に持ち出され、外部で処分されています。ただし、教養学部から排出されている産業廃棄物は、城南島にある東京都環境整備公社の運営する城南島産業廃棄物処理施設まで運搬され、同様に破砕などの中間処理を受けます。その後やはり新海面処分場に持って行かれることになっています。

 このように新海面処分場には、特別区内で生じる全ての一般廃棄物の残渣が埋め立てられることになります。容積にして1億2000万立方メートルに上りますが、この処分場は東京都の最後の処分場と言われています。

 以上、法律と条例の駒場キャンパスへの適用され方と我々の出したゴミの行方を見てきました。その中で分かったのは、

  1. 駒場キャンパスで排出される廃棄物は全て事業系廃棄物であり、事業者が排出者としてキャンパス内の廃棄物の処理に責任を負うこと
  2. 産業廃棄物の処理及び事業系一般廃棄物の再利用に関する計画は有名無実化していること
  3. リサイクルされるモノを除くと、ゴミは全て新海面処分場で埋め立てられること

です。



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