2−1 始めに
この章では、社会全体に適用されている一般的制度としての法制度を紹介します。そのうち駒場キャンパスには適用されている法制度について着目したいと思います。こうした制度として該当しそうなのは、法律や条例です。下の図では各法令の上下構造とそれぞれに対応する法令についてまとめたものです。
法制この構造と諸法規の対応
2−2 法律
廃棄物処理に関する法律として駒場キャンパスに適用されているのは、上図に挙げた3つの法律です。
第1は廃棄物の処理全般を定める「廃棄物処理法」です。廃棄物の定義や分類・処理方法責任の所在など廃棄物処理の根本が定められています。
第2はリサイクルに関する法律で、これには「再生資源の促進に関する法律」と特別法である「容器包装リサイクル法」が該当することが分かります。
なお、こうした法律の頂点にあるのが、始めに紹介した「循環型社会形成推進基本法」です。
では、廃棄物処理法・リサイクル法・容器包装リサイクル法が具体的にどのような制度を与えているか順番に見ていきたいと思います。廃棄物処理法が定めているものとしては、
- 廃棄物という概念
- 廃棄物の分類
- 廃棄物の処理方法
の3つです。
2−2−1 廃棄物の定義
一般に、法令上の定義によって曖昧な対象は客観的に解釈できるようになります。しかし、殊に「廃棄物」という概念に限っている言うと、法律でも曖昧な定義がなされています。
廃棄物の根本的な定義を定めているのは廃棄物処理法の第2条第1項です。
ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの
廃棄物行政について管轄する立場の厚生省では、この規定を廃棄物を例示したものに過ぎないとし、概念を規定しているわけではないとの見解を取っています。廃棄物という概念を明文で規定しているのは、厚生省が1971年に出した通達(厚生省環境整備課長通達)です。
廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意志、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではない。
「占有」は、所有しているか否かに関わらず実際に物支配していることを言います。客観的に「不要になった」とみなされても、廃棄物になるか否かは占有者の主観によるとされたのです。このように、占有者の意思が重要視されたことで、ある主体にとっては「廃棄物」であるものが、別の主体にとっては「廃棄物」ではないという事態が生じることがあります。第1章で触れた、香川県豊島の産業廃棄物の不法投棄問題はこの典型例といえるでしょう。この点については、今回の調査の趣旨とは直接関係はありませんので、ここではこれ以上触れませんが廃棄物問題の本質を考える上で、重要な示唆を含んでいます。例えば、教室にまかれている大量のビラを考えてください。まだ、誰も読まない状態で机に置いてあるビラは、この定義によると廃棄物だといえるでしょうか。それとも言えないでしょうか。
2−2−2 廃棄物の分類
次に、廃棄物の分類について廃棄物処理法はどう定めているのでしょうか。ここで廃棄物の分類を取り上げる理由としては、廃棄物の分類によって、廃棄物を処理する責任を負う主体と処理方法が変わってくるからです。この点については後で触れます。
下図を見てください。廃棄物は排出者によって大きく2種類に分けられます。
廃棄物の分類と処理体系
第1は事業者が事業活動に伴って排出する産業廃棄物であり、第2はそれ以外の廃棄物である一般廃棄物です。産業廃棄物は事業活動に伴って生じる廃棄物のうち廃プラスチックなど法令により定められている19種類のものを指します。ですので、事業者が出す廃棄物(以下事業系廃棄物と呼ぶことにします)には、産業廃棄物と、事業系廃棄物のうち法令で定められていないものである事業系一般廃棄物の2種類があります。さらに事業系廃棄物以外の一般廃棄物が、いわゆる生活系一般廃棄物と呼ばれるもので、皆さんの家から出しているゴミがこれに該当します。
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