こうした現在の慢性的な問題に対処するため、駒場キャンパスでは今月より廃棄物の新しい分別ルールが導入されます。事務棟から段階的に実施されていくことになっているので、今ゴミ箱が急にすべて変更されるわけではありませんが、将来的にはすべて変更される見込みです。現行のルールでは「可燃、不燃、ビン・缶」の3分別ですが、この新分別ルールでは新たな分類として「ペットボトル」を加え、「ビン」と「缶」とを別々に回収するようになります。従って3分別から5分別へと分別が増えることになります。また、それに伴い、分別表示も新しくなり、本郷キャンパスで使用されているものとの統一が図られます。また、これまでは講義棟と生協とで異なっていたゴミ箱の分別表示の統一も行われます。
新ルールの導入で、「「ペットボトルを分別することにより不燃物の排出容積を削減すること(従って、集積場から廃棄物が溢れるという第1の問題点を改善すること)」や「分別表示を分かりやすくすることで分別率の向上してリサイクルを図ること」が達成されると見込まれています。
新ルールの導入は駒場キャンパスにおける廃棄物の現状を改善する確実な一歩であることは間違いありません。しかし、現状への対策がそれだけにとどまるのならば、表面的な解決にとどまってしまいます。どんな現状にも、現状自体が自然に生じてくるのではなく、必ず背景にはそれを論理的に引き起こす構造が存在しているからです。果たしてこの新ルールは現状を解決するのか、構造をも解決するのでしょうか。ルールが改善されても、それを動かす人々や組織が、あるいはそれらの行動を規定する別のルールが変わらなければ、問題の根本的な解決にはつながらないと私たちは考えます。では、構造レベルで原因を取り除くような、より発展的な対策をするためには、どうすればよいのでしょうか。
1−5 今回の調査の目的
まず第1に、今日の発表では、主な排出者であり問題原因の一端を担っている私たち学生の立場を捉えなおしたいと思います。従って、私たちの学生生活に深く関わる生活系廃棄物(これは可燃ゴミや不燃ゴミ・缶・ビンなど日常生活を送る上で、必然的に排出されるものを意味します)に対象を絞るものとします。それを通じて、現在の駒場キャンパスにおける廃棄物処理制度を「廃棄物の流れ」と「それに関わる意思決定」の2側面から分析したいと思います。さらに、学生を含めた廃棄物に関わる様々な主体の役割や責務を浮き彫りにします。
次にどのように駒場の廃棄物処理システムを分析するかということについてお話したいと思います。今回この調査にあたって私たちは制度という側面に注目して分析を試みました。
法制度を含む広い意味での「制度」面に注目した理由を説明すると、一般に発生した廃棄物に対しては、それが資源として価値があるとみなされる場合を除くと、そのままでは関心が向けられません。経済学上の一般論としては、廃棄物はGoodsに対するBadsであるということが挙げられます。Goodsが「正の価値をもつ財」であるのに対して、Badsとは「負の価値をもつ財」を意味します。従って廃棄物は常に不法投棄や無関心へのインセンティヴが働いています。どのような廃棄物も基本的には制度通りにしか処理されていないという仮説を立てることが可能だと思います。従ってそれを規制するための法制度が重要となるわけです。以上は一般的な理由ですが、狭く駒場キャンパスに限った場合にも「制度」は重要だと思います。「制度」は廃棄物の流れ、つまり廃棄物の運搬・処理・処分もしくはリサイクルの方法や、それに関する意思決定を規定するものです。また、駒場キャンパス内における各主体の立場や役割、そしてその逸脱行動を考える上でも有効な切り口となるでしょう。
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