7月4日(金)18時から学生会館で「学生会館エコ改修と運営のための特別講座」第4回が開かれた。今回は学生会館の改修と運用の案を実際に出そうということで、場所が前回までの722教室と異なり、学生会館で開かれた。今回は最終回ということで、今まで講義してくださった善養寺氏の他、教養学部副学部長の長谷川寿一先生など5人のコメンテーターの方にも参加していただいた。
<導入>
まず最初に環境三四郎のメンバーから今回の講座で今までやってきたことの確認と第4回目で何をするかの説明があった(今までの内容に関してはこれまでの講義録を参照してほしい)。今回やることとしては、学生会館の改修・運用案を出してもらうことなのだが、事前に以下のような説明があった。
- 今までの先生の話をなるべく活かす
- 学生会館に適した案を出す(根拠を持った提案をする)
- 維持管理やコスト面の話なども盛り込んだなるべく現実的な話を(とはいえ、問題意識があったらそれだけでも出してほしいが)
- 今回の改修のような話が進む時の組織の在り方、議論のされ方についても意見があったら出してほしい。
<学館回り>
説明の後、図面が配られ、実際に参加者全員で学館を回ってみた。学館に適した案を出すためにもまずは学館を知ろうということだ。参加者は図面を片手に学館を地階から3階まで回り、気づいたことなどを図面に書き込んでいった。学館を維持管理している学生会館委員の方も参加してくれたため、適宜委員の方に質問しながら進んだ。
<学館へのイメージを共有>
学館を一通り回った後、窓ガラスに貼られた学館の図面に気づいたことを書いたポストイットを参加者全員で貼っていった。改修案・運用案を出す前に学館の現状を皆で共有しようということだ。貼ったあと、お互いに回ってみた感想や貼り付けたコメントへの質問などをして、しばらくの間雑談ムードで話し合った。
<ポストイットに書かれた感想>
○学生会館地階
- 地下にポンプ室?
- 他の階もそうだが、どこかから夜間換気ができないか?
- 全体的に臭い。空気がよどんでいる。
- 涼しい
○学生会館一階
- 一階は天井が高い
- 北側は日当たりが良い、明るい、暖かい
- 南側の方が暗い、涼しい
- 窓にカーテンをつけるのはどうだろう?
- 部屋の区切りがベニヤだったり、コンクリートだったりする
- 部室の上のほうに窓がついている
- ラウンジに配管がむき出し
- ラウンジはきちんと採光・通気したい
- ラウンジに不格好な換気扇がついている
- 自販機よりもむしろコーヒーショップが欲しい
- 中庭を整備したい。現状では無意味。皆がいられる場所にしたい。
○学生会館二階
- トイレが使えない
- 2、3階に気流がない
- 廊下やベランダにゴミが多い→きれいに維持していくためにはどうすればいいのか?
- ガラスドアが開かない
- 窓ガラスを断熱化したい
- 窓ガラスに風孔を設けることで、減量化を図る
- ライトをもう少し小さい区間で管理
- 廊下のライトの省エネ化を図る→LEDにするのはどうか?
○学生会館3階
- 廊下が配管むきだし
- トイレが使えない
- 雨漏りが激しい
- 窓の位置と部屋の仕切りがあっていないところが多数
- 耐震の補強材にアモルファス太陽電池をつけたい
- 3Fでも木に覆われていて暗い、多少涼しい
- ベランダの活用ができないか?
- 屋上のコンクリートの劣化が激しい
- 屋上に植物が自生している(いっそ屋上緑化か?)
- 屋上にはもっと加重に耐えられるように強度が必要
<改修案・運用案を考えよう>
皆で学生会館に対するイメージを共有した後に、二つのグループに分かれて改修案・運用案を考えた。机の上にそれぞれ図面を広げて、わいわいがやがや話しながら、より使いやすい学館、より環境負荷の小さい学館にするためにはどうしたらいいか考えていった。色鉛筆を使って図面に絵を描いたりしながら楽しく進んでいった。
<考えた案の発表とコメント>
最後にそれぞれのグループが考えた案を5人のコメンテーターの方の前で発表してコメントをいただいた。時間が足りなくなり、最終的には21時20分頃までかかったが、コメンテーターの先生方と改修案を考えた学生との間で意見が交換され、有意義だったと思う。
以下にどのような改修・運用案が出てきたかの概要を記す。
○グループAの発表
<地階>
- ポンプ室が移動することに伴い空室が1つできるが、防音設備をつけて音楽練習室にできるとありがたい
- 倉庫は確保したい。
<一階>
- 窓ガラスの断熱化
- ロビーのすみのコーヒーショップがあったデッドスペースも使えるようにしてほしい。窓として開放して光の入る空間にしたい。
- 天井の採光を有効活用できるようにしたい。
- 天井が高い→中二階を作りたい。
- 中庭を人が集まれるような場所にしたい。
- 換気扇が多いと不格好だし、自然換気ができるようにしたい。
- ラウンジの蛍光灯配置が効率が悪いのではないか。向きがばらばらだし明るすぎると思う。
<二階>
- 現在、二階・三階にも一つずつトイレを設置することになっている。しかし二階、三階に流しは必要だが、トイレはいらないのではないか。
(コメント)中水利用する時に一か所に集約してくれると配管コストが非常に安くすむ。
- 現在、ベランダやひさしが部室に付随するスペースとして物置になっているが、有効活用したい。例えば、ベランダは、外廊下にするとか植物を育てるとか。
とはいえ、耐震補強のブレースが邪魔になるので、実際に有効活用できるかはわからない。
(コメント)ひさしを、光をとるところと物置にするところに分けてはどうか?
- 現状ではホールから屋上に出られるようになっているのだが、この改修案だと屋上に出られなくなる。旧食堂がなくなると2階屋上の面積が2倍になることを考えると、有効に使いたい。
(コメント)既存の旧食堂がなくなったあとにどのようになるのか想定して使い方を考えたほうがいい(ラウンジから螺旋階段をつけるとか)
- 窓のしきりと部屋の仕切りがばらばらになっているので、これをきちんと統一してほしい
- サッシの更新
<三階>
- 屋上を有効活用したい。前提として、現状では窓から出るしかないが、扉から出られるようにする。屋上に柵をつける。キャンパスプラザの屋上のように、音楽・応援や演劇系のサークルなどの活動場所として使えるようにする。太陽光パネルを高めに設置し、涼しくなる日陰を使って活動をする。
○グループBの発表
<地階>
- 特になし。可能なら通気を良くしたいが、防音性が高く、密閉されている部屋が集中するので難しいだろう。
<1階>
- ラウンジの明かりとり部分(天窓)をきちんと使いたい
- コーヒーショップを撤去するのだから、その部分を窓にしたい。
- 自販機は電気を使いすぎているので必要ない。すぐ近くにあるし、カップめんの汁を流して詰まらせる原因にもなる
- 現状としてロビーにコピー機が常時置いてある。そのため夏は熱がこもって湿気があるので、換気扇を集中してつけている。
(コメント)コピー機とかは集中的においてそこだけ別に空気を管理したほうがいい
- 中庭をもっと人がいられる場所にしたい。噴水などを作って人がいられる場所に。川を作りたい。また木が茂っているので剪定して明るくしたい。その分を緑のカーテンを作って夏の暑さをコントロールしたい。
- フレームをいれるよりは建物全体を囲って補強して、そして外断熱にしたい
- 現在の改修案では南側に鉄骨をいれることになっているが、採光の点でよくない。
- 廊下のセンサーでつくような電灯にするのは良いが、蛍光灯だと寿命が短くなり非効率だと思う。経験上、センサーのシステムを導入しているキャンパスプラザでは蛍光灯を頻繁にかえている。LEDなど点灯と消灯を繰り返しても問題がないものにしたい。
- 窓ガラスを断熱ガラスにしてほしい。
- 電力使用料の「見える化」について。何に使っているか、つまり使用系統ごとで電力量がわかったほうが、部屋毎にわかるよりもいいのではないか。電灯・暖房・冷房・部屋のコンセントなど。また、ロビーに使用量を表示しておくのはどうだろうか。
<二階>
- 断熱材を導入する。
- 二重窓
- 換気用に夜間も常に解放できるような小さい窓を作る
- 窓ガラスに風孔を設けることで、減量化を図る
- もし二階・三階にもトイレを作るのであれば、トイレを明るく綺麗にして、汚す気にならなくするようなトイレにしたい。
- ライトの管理に関しては、大きな部屋だったらもっと区分けを細かくすればいいのではないか。
<三階>
- 廊下に天窓をつけて採光を取り入れることで照明が要らないようにする
- 屋上に太陽光パネルをのせると遮熱にも発電にもなる。防水効果もある。ただ太陽光パネルを設置するためには屋上が加重に耐えられるようにしておかないといけない。
- 屋上に出られるようにした上で、屋上緑化を行ったり、屋上菜園にしたりする。維持していく時に、ベンチなどを設置して人が集まれる憩いの場所にした方がうまくいくのではないか。
- ジュニアTAなどを維持管理のための管理スタッフとして使っていいのではないか。タダだと責任感がなくなるが、常時学生が使っている学生会館ではそれでは困ってしまうので、大学の補助も必要だ。
また、コメントから出た案として、経済的なインセンティブを与えるために、
- 自分たちで太陽光発電の組合をつくり、売電をして利益を得て、維持管理していく(タダでなくなる)
という案が出た。またそれに対するコメントとして、
- 現在の使用量なら自給するくらいの発電は可能
- NEDOやOBからお金をもらって太陽光パネルを設置する。売電して浮いた分はどこにプールするかあらかじめ規約を作っておく。お金の流れの見える化。
などが出た。環境負荷を減らせば、学館を利用している人たちに還元されるような仕組みを作っていくことが重要だという点ではグループのメンバーやコメンテーターの方々は、皆一致していた。
<最後に>
最後に環境三四郎のメンバーから今回の勉強会の総括があった。
多くの学館ユーザーを集めることはできなかったが、学館を一番よくしっている学生会館委員の方やサークルをとりまとめる学友会の方と、教養学部の長谷川先生、施設係の方などとの意見交換が活発に行われたことには意味があったと思う。これまでの学館改修に関する話し合いの中でコミュニケーションが不足していた部分など問題もあったと思うが、そういった点が改善に近づいたならば一定の意義はあっただろう。第3回の勉強会で迫田氏がおっしゃっていたように、まだ改修に反映することのできる点は多くある。これから先も学館委員や環境三四郎のメンバーで協力して、少しでも良い学館を作れたら、と思う。
(T.M.)