「学生会館エコ改修と運営のための特別講座」第1回目が6月17日(火)の18:00から駒場の7号館で行われました。
講師は武蔵工業大学で環境や建築を専門にしていられる宿谷昌則教授です。
まずはじめに、この特別講座の運営をしている環境三四郎より、学館の現状や耐震工事とエコ改修、この講座の概要などについて説明がありました。
この講座の目的は、ユーザーの案を実際に改修に反映してもらうというのと、改修後の使用方法をユーザーが認識するというものです。
その後、この特別講座ではグループワークが中心になるということで、3〜4人のグループに分かれてグループ内で自己紹介を行いました。
実際に学生会館を利用しているユーザーや、建築に興味のある学生、専門家等いろんな人が混じっていました。
グループでのワークショップをする前に宿谷先生から「熱と住まい」についての簡単な講義がありました。
- 「熱の振る舞い」
- 冷房とか暖房のことだと思いますよね。しかし、宿谷先生が言っているのはもっと大スケールなことで、地球環境やゴミ問題でも熱の振る舞いを理解するのは大切だということ。
- 住まいの「環境」
- ここで宿谷先生から質問です。「一日の何時間を建物で過ごすと思う?」
実際80〜90%らしいです。人生80年として64〜72年。
つまり建物とは、人にとってもっとも身近で、身近な環境ということです。
ここから、実際に建物の温度をグループごとに予想して計測しました。
まずは室内、
|
予想 |
測定値 |
天井の温度 |
25 |
24 |
床の温度 |
25 |
24 |
室内温度 |
25 |
25.6 |
窓ガラスの温度 |
15 |
24 |
手のひらの温度 |
30 |
34 |
湿度 |
60 |
60 |
実際に感じていたより気温は高く計測されました。
これは床や天井が冷たいかららしいです。
室内の気温というのは外気温が大きく影響はするのだけれど、それはせいぜい3〜4割らしいです。⇒「放射」
照明による照度も測りました。照明を全部つけると700〜800lxでした。
その後、廊下、外でも同様の計測をして、そのデータをもとに講義を進めていきました。
気づいたこととして、
- 空の温度を測ると-7℃
- 木の幹は19℃
- 廊下のガラスの温度は20℃(室内は25℃)
- コンクリートと鉄が同じ温度
- 数値はあまり変わらないのに外は涼しく感じる。
1. → 上空に行くほど空気の温度は下がる。高いところから低いところまでの平均としてこの値が出てくる。
湿度によって値は変わってくる。
2. → 木は葉っぱから蒸散を行っているのでそれで温度が下がった。⇒「蒸発」
木の葉っぱで冷やされた空気は下降してきて木陰が涼しくなる。⇒「対流」
4. → 温度が一緒でも金属のほうが冷たく感じる⇒「伝導」
「熱の振る舞い」では上に上げた「放射」、「蒸発」、「対流」、「伝導」の4つの要素が大切ということです。
建築環境では
- いつか、どこかで異なる<多様性>パッシブ型
- いつでも、どこでも同じ<一様性>アクティブ型
というものがあり、前者は採光や風通し、後者はエアコンなどです。
パッシブを捨ててアクティブに偏りすぎたことが環境問題の原因ともなっているということです。
パッシブ型が建築環境の基本になっていて、パッシブ型を活かしてアクティブ型を使わなければならない。
エクセルギーという考え
エネルギー保存の法則に対してエネルギー消費という言葉はおかしいですよね?
感興問題ではエネルギーではなくエクセルギー(資源性のあるエネルギー・物質)という考え方があります。
エクセルギーが低くなるところというのは、人も快適になるということです。
緑のカーテンなどの例を用いてわかりやすく説明してもらいました。
宿谷先生の講義を終え、受講者がグループ同士で意見を話し合い感想や質問をまとめました。
以下にそれを記します。
感想
- 機械に頼る前にできることもあるでしょう。
- 建物の環境を考えるにはまず熱。そして機械に頼らず、自然の力を利用することが大事だという印象。
- 外にある緑の効果は大きかった。緑に対する感じの持ち方が大切。
- 今日は教室に息せき切って駆け込んだ直後だったので体感の感度がいつもと違っていた。
- 教室環境の差が目に見えて面白かった。
- 省エネ+快適→魅力的
- passive型の技術の見直し→もっと浸透させるべき
- 脱active偏重
- 異質な集団が生活する空間のデザインというものの難しさと面白さを感じた
- 日よけは意外と効果があるんだ。
- 触ったのと測ったのではぜんぜん温度が違う。
- 緑のカーテンて食えるの?
- 今日は楽しかったです。
質問
- 緑のカーテンにお勧めの植物は?
- 植物の手入れは?
- 学生会館の窓は具体的にどういう風にすればいいの?
- 先生の自宅で工夫されているところはありますか?
考察
- きゅうりやゴーヤで緑のカーテンを作り、夏の終わりには学生全体で収穫祭をしたいです。
- 環境のよい建築には緑が重要だ。
- 緑だけでなく小動物との共存も身体的に了解できることも大切。
(Y.G.)