第三回 義江 彰夫(よしえ あきお)教官


所属: 東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻比較文学

講義タイトル 日本の対自然関係史の再検討〜中国との比較を中心に

講義内容要旨

原始から現代に至る人間の歴史を、自然環境破壊と関係修復の複合という 視点で巨視的・根本的に再検討することはますます重要な課題になってきたと 思われる。今回はアジア、とりわけ中国と比較しながら、上記の視点で 日本社会の歩みを捉え直し、自然認識・対自然関係史の日本的特質を明らかに したい。

参考文献

「自然への共鳴」 全3巻 思索社 1989〜90年

「日本の社会史」 全8巻 岩波書店 1987年

「歴史の対位法」 東京大学出版会 1998年

環境問題について関心を持ったきっかけ

十数年前日本の原始から中世末までの通史(日本通史I『歴史の曙から 伝統社会の成熟へ』山川出版社 1986年)を執筆し終えたとき、この通史が 近代以来の人間中心主義的進歩史観を根本的に越えられなかったことに気付き、 大いに落胆しました。と同時にその中で、人類の進歩の歴史は、自然征服 ・破壊を犠牲としてのみ実現されたことが見えてきました。当時地球規模の 環境破壊問題が顕在化してきていたことが、私をこのような発想に導いたことはいうまでもありません。

現在私は、国立歴史民俗博物館の対自然関係史にかんする6年がかりの研究プロジェ クトに参加しています。今年3月までの3年間は長野県更埴市の古代から近世に 及ぶフィールドワークを行なってきました。今年4月からは江戸(東京)ないし 鎌倉をフィールドワークの対象として近現代まで辿る予定です。

環境問題は現代の様々な問題の中でも最も解決困難なテーマだと思います。 コマーシャリズムに堕しないよう、又人間否定に陥らないよう、私も皆さん とともに模索してゆきたいと思っています。