(2)最近の排出燃料規制の収斂
・日本 ・・・ (NOx0.25g/km)→2000年新短期規制(97年末答申ガソリン車NOx0.08g/km)、2007年新長期規制硫黄分(軽油):93年2000ppm、97年500ppm、さらに検討中
・アメリカ ・・・94年「第1段」規制(乗用車約NOx0.4g/km)、98年「第2段」規制案(2004年以降発効予定)(乗用車NOx0.07g/km)
硫黄分(ガソリン):98年提案・現状300ppmを2004年30ppmに
・ヨーロッパ ・・・指令98/69:2000年ガソリン車NOx0.15g/km、2005年0.08g/km
指令98/70:硫黄分ガソリン車2000年150ppm、軽油350ppm、2005年ガソリン・軽油とも50ppm
1980年代の自動車排ガス規制はかなりバラバラだったが、最近になりかなりハーモナイゼーション(調和)が進みました。
(3)温暖化のための燃料規制
・日本・・・98年省エネ法の改正 「トップランナー方式」(燃費の一番良い車を基準に、基準を設定する)を採用。ex)ハイブリッド車は除かれた。トップランナーすぎるため、他の車がついていけない。
・アメリカ・・・93年CAFEプログラム強化(燃費規制の強化)が試みられるが失敗 技術開発にお金を使うことが進められる
・ヨーロッパ・・・自動車工業会・欧州委員会で自主協定を結ぶ(2008年までCO2を25%削減するという内容。しかし、どの自動車会社がどれだけ、という具体的な部分は示されていない。自動車工業会はディーゼル車を売ることでCO2を減らそうとしており、もしディーゼルが使えないのであれば25%は達成されない、とされた)
(4)業界主導の調和の試み
<自動車業界の自主的なハーモナイゼーション>
95年 TABD(環太平洋ビジネス対話)=環境安全の基準の調和が図られる
98年 世界燃料憲章=日米欧の自動車業界が石油会社に燃料の改善を求める
背景)自動車会社の被害者意識:自動車会社ばかり燃費効率の改善に努めてきた。石油会社の努力がもっとほしい。
<国連欧州経済委員会第29作業部会>
高レベルでのハーモナイゼーションが求められる議論が展開。
(5)WTOのTBT協定
各国で排出基準が異なると貿易障壁になるため、なるべく国際基準をつかうようにしなさい、という内容。
(6)小括
(1)リスクトレードオフ;ディーゼルかガソリンかでヨーロッパと日米はかなり異なる。
(2)高レベルでの調和化;かなり進められてきた。
(3)調和化のレビューの場の正当性;誰が基準を正当化するのかという問題が残っている。
3.中国の石炭問題
中国では石炭が主なエネルギー源です。大気汚染や酸性雨が引き起こされます。これをどうするかが重要なイッシューとなっています。改善するために、
(1)石炭発電所にプロジェクトファイナンス:WBなどが行ってきた。
(2)制度建設・モデル都市プロジェクト:WB重慶汚染管理産業改革プロジェクトなど。
(3)技術移転
などが行われます。しかし、実施段階で様々な問題が生じていきます。
(1)セクター・形態の偏り:対策が発電所に偏っている。
(2)石炭回避の可能性:中国に援助を行おうというワシントンポリティックスに批判するNGO。
(3)環境規制:たとえば硫黄酸化物規制の場合、排出汚染費が存在するが、不十分(汚染したほうが、対策を行うよりもコストが低くすむ)
(4)金融危機:省エネルーギー投資等比較的短期で改修される「相勝ち」の投資がなされない。
レッスンをまとめますと、
(1)リスクトレードオフと両立可能性:トレードオフの関係にある温暖化対策(国際的関心)と都市公害対策(中国側関心)、どちらを重視するか。
(2)貿易の観点からの援助案件
今日は、国際的な調和化と国内の課題をどうおりあいをつけるかということが如何に難しいかということを自動車を例に考えてみました。例えば日本で自動車環境基準でかなり厳しい基準を作ったとき、他の国は「WTO協定違反だ!非関税障壁だ!」という風にクレームがつき、国際機関で調整されていくのです。つまり、環境基準に対して貿易の観点からモノが申されるわけです。ここでは、貿易の観点からの意見がどれほど重視されるべきなのかと、重要な問題がでてきます。また、繰り返し述べてきましたが、リスクトレードオフが存在しており、政治的な意思決定がおこなわれる際にどうするかという問題が出てきます。このような問題を考える際には、政府、企業、市民の連携をどのように作っていくのか、が重要な課題となります。法的なシステム設計の問題、政治的な問題、経営学的な問題が絡みあっているのです。如何に複雑かということがわかっていただけましたでしょうか。
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