5−1 現状の問題点
さて、第5章では、今まで第2章や第3章、第4章で見てきた事実をもとに、駒場における現状の問題点を示し、そして、それらの問題点に対する私達なりの解決策を提示したいと思います。ここで言う問題点とは、私達が第一章で示した、「廃棄物の絶対量が多い」、「倉庫があふれている」、「分別が徹底されていない」、「ビラが散乱している」などの、目に見える問題点、現象として現れているレベルでの問題点ではありません。これらの現象レベルの問題の背後にある、廃棄物処理に関する意志決定のなされ方や学部の廃棄物削減計画などの問題点、すなわち構造レベルの問題点を取り扱いたいと思います。そして、この構造レベルの問題点に対する私達なりのビジョンを示します。
それではまず、問題点から説明したいと思います。私達としては、駒場における廃棄物処理の意志決定のなされ方などに関して、以下の4つの構造的な問題があると考えました。
- システム設計に関わるのが経理課用度掛と環境委員会のみである
- 主体間の意志疎通、情報流通が不足している
- 専門的知識を持つ人が意志決定プロセスに関与していない
- 再利用計画が形骸化している
この4つは、お互いに絡み合っている部分もあるのですが、駒場の現状の問題点をこのような4つの側面からとらえることができるのではないかということです。それでは、順番に説明していきましょう。
1 システム設計に関わるのが経理課用度掛と環境委員会のみ
まず、(1)についてです。第3章で見たように、駒場の廃棄物処理に関わるシステム、例えばごみの分別を何種類にするかとか、ごみ集積倉庫を増設するかどうかなどについては、経理課用度掛と環境委員会が決定しています。しかし、経理課用度掛にとっては、先にも述べたように、学内で使う物品や業者の手配が本体の業務であり、廃棄物処理システムについては他に扱っている部署がないからやっているとのことでした。また、環境委員会にしても、形式的には廃棄物問題に関する意志決定を行う組織なのですが、事務方である経理課用度掛に業務を任せていることも多いようです。従って、駒場の廃棄物処理に特化した業務を行っているわけではないこの2つの主体のみが、システムの設計に関わっているという意志決定制度には問題があるのではないかと思われます。
2 主体間の意志疎通、情報流通が不足
次に(2)の問題点です。例えば第3章で述べたように、清掃業者としては、ごみ集積倉庫がすぐにあふれてしまうという状況を改善するために、倉庫の増設を長い間経理課用度掛に強く求めていましたが、なかなかその要望はかなわず、最近になってようやく倉庫の増設が決まりました。要望を受けていた経理課の側としても、予算の面など色々事情はあったのでしょうが、現場の強い要望がなかなかシステムの設計者に届かない、あるいは届いていたとしてもその声が活かされていないという現状には問題があるのではないでしょうか。
3 意志決定プロセスの関与に専門的知識を持つ人の不在
そして、(3)についてです。これは、(1)や(2)の問題点を別の側面から見たものかもしれません。環境委員会所属の教官の方にしても、廃棄物処理について専門的、学問的な知識をお持ちの方はいないようですし、また、用度掛の方にしても、本体の業務は廃棄物処理システムの設計ではないというくらいですから、廃棄物に関しての専門的で豊富な知識は持ち合わせていないようです。また、(2)からも分かるように、清掃業者の方など、現場を知るある意味専門的な意見もあまりうまく活かされてはいないようです。
4 再利用計画が形骸化
最後に(4)の問題点についてです。大規模事業者である駒場は、条例により、毎年区に対して「再利用計画書」を提出しなければなりません。その計画書では前年度実績と今年度計画を報告することになっています。しかし、この計画書において挙げられている再利用率の計画値の30%に対して、現状は3〜4%という水準にとどまっています。新・分別ルールの導入によりペットボトルの分別が行われることになり、再利用率の向上は見込めますが、30%という計画値の達成はまだまだ難しいようです。現在の計画は、実行と評価の伴わない建前だけのものになってしまっているのではないでしょうか。
これら4つの構造レベルの問題点が絡み合って、廃棄物処理システムの改善、廃棄物削減に向けた取り組みを阻害しているというのが駒場キャンパスにおける問題なのではないでしょうか。
5−2 本郷キャンパスの事例
次に、これら駒場キャンパスの現状を相対化するために、東京大学のもう一つの拠点である本郷キャンパスにしばらく目を向けてみましょう。まず、本郷での廃棄物処理システムについて簡単に説明し、続いて、「そのシステムの立案、設計の中心になった主体」、「様々なデータに基づいた計画的取り組み」の2点について述べたいと思います。駒場での4つの問題点、特に3つ目の「専門的知識の欠如」と、4つめの「再利用計画の形骸化」と比較すると興味深いのではないかと思います。
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