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ゼミ「『環境の世紀』演習編」



6月21日 住 明正


質疑応答

Q 講義で触れられていた「アイスアルべドフィードバック」について、詳しく教えてください。
A あるシステムにおいて、出力に比例して入力が更に増え、また出力が増えて…というようにどんどん増えていくような回路構成になっているとき「正のフィードバック」という。つまり、ある変異があったとき、原因があって結果があるとすると、結果がまた原因になるような場合である。例えば、
 温度が下がり雪や氷が増える
→雪が白いから太陽を反射する、つまりアルベド(反射率)が上がる
→太陽から来るエネルギーが減り温度が下がる
→ますます雪が降る
→ますます反射率が上がり、太陽からのエネルギーが減り、温度が下がる
というループがあるとして、これをアイスアルベドフィードバックと呼ぶ。

同じような例として「暴走温室効果」がある。
 温度が上がる
→水蒸気量が増える
→水蒸気は強力な温室効果ガスなので、ますます温度が高くなる
→ますます水蒸気量が増える
→結局、水は全て蒸発し、地球には水がなくなってしまう…
という考え方だが、実際にはそう単純ではない。それは、地球には暑いところと寒いところがあるから。熱帯のようなところで温度が上がれば確かに水蒸気増加につながるが、極地方のような寒いところでは温度が少しくらい上がっても水蒸気量はほとんど増えない。一部であたたまっても、他の部分の冷たい空気で消すことができる。自然を相手にする科学は、実験と違ってプロセスを自分で選べないのが難しい。一部だけを切り出して見ればあてはまることでも、色々なプロセスが様々に効いている自然では、あてはまるとは限らない。
 温暖化に関するわれわれの知識は不充分である。しかし、人間が行動する際に、知識が完全ということはまずない。人間は、やりたいことをやっているときは不充分な知識でも十分だと思うし、やりたくないことをやらされるときは十分な知識でも不充分だと思うもの。科学的知識が完全だから、正しいからと言って、人は必ずしも行動するわけではない。大事なのは、いろいろな材料から理性的に判断する訓練と、人の言ったことを鵜呑みにせず自分で考える訓練。
 要するに、不安という問題。不安は、原因がないからこそ解消するのは難しい。不安を乗り切るには、自分に対しては覚悟、他人に対しては寛容、ということが大切。
 今の日本では、エネルギーを不必要に使っていて、意識していない。住宅にしてもエネルギーを無視したデザインだったりするので、何を美しいと感じるか、ということも大事である。いろんなところを見直していけば、そんなに無理をしなくてもCOP3の6%減という目標も実現可能な社会ができるはずである。例えば、日本で本当に車社会は必要か。現在、田舎ではそうなってしまっているが、これにしても考える余地はある。


グループディスカッション

 今回は住先生に二つのテーマを提示していただき、それぞれのテーマで2グループずつ話し合いました。ディスカッションに入る前に先生から、テーマに関する説明がありました。

「まじめに考える社会の生命力」

 自分で考えるのは大事なこと。他人に頼っていれば楽だが、自分で考えれば深刻になる。個性の確立は、しんどい道である。
 特に環境問題を考えるとき、信用していいのかどうかわからない情報が増えている。データはオープンにし、皆がそのデータを見て自分で考えることが大切。


「21世紀世界に通用する日本のパラダイム」

 これから日本を背負っていく学生に、日本の国をどう維持していくかを考えてほしい。今の日本はやられっぱなしだが、世界的な秩序を作ってリードする側に立つためには秩序作りのできる構想力が必要。1億2千万人を食わしていく責任をもつためには精神的なタフネスさと心の優しさが必要だから、それは若いうちから考えてほしい。


グループ1

テーマ:「21世紀に通用する日本のパラダイム」

○日本を考える前に、世界のいろいろな国について話そう
 →アメリカに注目。(ここで住先生登場)
 住先生の見解:
  アメリカは人工の国。「アメリカ人」というものがない。伝統を無視している。
  人間の心理には、伝統にノスタルジーを感じるけれども伝統に縛られたくないという二面性があって、非常に難しい
 →一同納得。

○日本の「ぬるま湯」について
  →まとまらず。


グループ2

テーマ:「まじめに考える社会の生命力」

○「社会の生命力」とは何だろう?
 ・自己実現できること
 ・外国に負けないこと

○逆に考えて、これが無いと生命力がないものは?
 ・持続可能性
 ・やる気
 ・指導者の存在
 ・食べ物
 ・資源
 ・他の社会との交流
 ・政治的・経済的な安定
   →発展途上国にはない→発展途上国は生命力が無いのか?

○政治的・経済的に不安定でも生命力のある社会は?
 ・安定とはどのレベルなのか?村のような小さな単位でもシステムが回っていればそれは安定している
 ・村単位のような小さなレベルでも不安定なら生命力はないのだろうか
 ・生活に切迫感があると活気があるように感じる

○日本には生命力があるのか?
 (ここで全員の意見を聞いたが全員無いような気がするとの答え)
 なぜ無いような気がするのか
 ・ハングリー精神が無い
 ・他の社会に依存している
 ・社会全体が流されているような気がする
 ・自分がやったことの効果が見えにくい。そうするとモチベーションが下がり、社会全体でも活気が無くなる。
   例:リサイクル…自分が一生懸命分別しても他の人が分別せず捨ててしまうと意味が無くなる

○物質的な面の話と精神的な面の話を分けて考えてみよう
 ・物質的な面は大体良さそう
 ・精神的な面が無いような気がする
 ・個人個人のレベルで生命力がある人がいても全体で無い
 ・ある人もいてない人もいて全体で無いのはなぜ?単純に考えてある人が無い人より多いのか
 ・1つの方向にまとまっていないからでは。自分が良ければ国はいいや、というような。
 ・1つの方向にまとまるとは言ってもナショナリズムの危険がある。

○どうすれば生命力ある社会が築けるか?
 ・世界を広く見ることのできる視野を持つ
 ・ 国全体で取り組めるような問題を考える。環境問題など。


グループ3

テーマ:「まじめに考える社会の生命力」

○「社会の生命力」とは?
  個人の生命力→自分で主体的にものを考えて行動に移せる、覚悟や寛容さを持って行動できる
 →一人一人がやっていても、社会全体には広がらない
  社会全体の生命力→文化、教育

○「豊かさ」の基準
 GDP→目に見えやすい、しかし豊かさは金だけか?
 自分たちが何に囚われているかを見直すことは、一人一人が主体的に生きる上で必要
 →それが徐々に広がって社会全体に影響を与えうるのでは?

○ワールドカップ
  見るからに、社会の生命力にあふれているようである。
  だが、多くのにわかサッカーファンは周りに流されているのでは?流されているなら、主体性がないのでは。

○日本には生命力があるか
  →ない
 文化的にも産業的にも東京に一極集中していて、地方から全国に広がっていかない。ある意味効率がいいが、多様さが失われることで生命力がなくなってしまう。


グループ4

「21世紀に通用する日本のパラダイム」

○現在の日本のパラダイム…悪い点はどこか?
・お金を出すだけのODA、お金を出せばそれで済むという価値観
  直接現地に行くべきでは、もっと外に出ていくべきでは?
  鎖国的なところが残っている
  白人コンプレックスも強い
  外国の目から見て、よそよそしく、うちに固まりすぎて切るというイメージができている

・教育
  期待されているにもかかわらず社会意識が薄い若者、野心がなく「何をやりたいのか判らない」という若者の増加

・政治家
  理系の知識に欠ける

○21世紀に通用するパラダイム…どういう態度で臨むべきか
・対等な国づきあい
  アジア諸国との戦後処理のしこり、アメリカへの依存…
  今まで対等な国づきあいはできてこなかったのでは、それでは以上の問題点を解決していけないのでは?

・対等な国づきあいのためには…
  新しい価値観を作りあげる。
  まず、まったく違う価値観を持つ人々の存在を知る
 ←小さいときからの交流などにより、グローバルな価値観を育てあげる必要

ゼミの風景

統括

自分で判断しないで、聞いたことをそのまま鵜呑みにするのは危険。

「東京から全て文化が発信される」
東京コンプレックスというのは、普遍的ではない。
今の地方の人で、東京にコンプレックスがある人は少ないはず。経済レベルにしろ文化にしろ、今は地方のほうが豊か。

「日本のODAは金だけ出して役に立っていない」
一部の新聞の論調、本当のところはわかっていない。
日本の「金は出すけど口は出さない」ODAを評価する声もある。

「日本の政治家には理系の知識がない」
日本の政治家はかなりレベルが高い。
政治家の側は「日本の国民が悪い。できの悪い選挙民を相手にしていたらまじめに考える気はなくなる」と言う。お互い様かもしれない。

 しばしば人は、マスコミの言ったことを自分の判断と思いがち。自分でできるだけいろいろな生データにあたってものごとを判断する必要がある。常に物事の出発点に戻って考えるのが重要。それが「まじめに考える」ということ。人間の社会は非常に重層的で複雑。若いときにあまり頭を固くしないほうがよい。今は、昔に比べて情報量が増えて、世の中が非常に複雑になってきている。実際のデータから常に自分なりに考え、いちいち納得するプロセスが大事。

「地球温暖化の真実」
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