人間の活動に伴い自然環境が変化する。たとえば、産業育成、養殖漁業の展開、マングローブ林の養殖池等への転換利用など、沿岸域における人間活動が活発になれば、排水・廃棄物に由来する栄養塩が多くなり、水域の富栄養化をもたらす。また、タンカー等大型貨物船のバラスト水移動や、養殖海産物の移植に伴い生物広域化が起こる。その結果、海洋生態系にさまざまな変化が見られる。特に、海洋のプランクトンなど微小生物は世代時間が短いため、環境変化に敏感に反応し、その結果このような海洋の基礎生産を担う生物に起こる変化が順次高次生物に波及する。
人間活動に伴う海洋生態系変化は地球規模の問題であり、先進国の一部では対策を立てることができるが、東南アジアなどの発展途上国においては、すでに問題が起こっているにも拘わらず有効な対策がたてられていない。本講義では、有害有毒プランクトンを例として、人間活動による海洋生態系の変化と、その変化がもたらす社会生活への影響について説明する。