2000年に、循環型社会基本法ができた。この名前だけを見れば、循環を行うことによって、環境適合性の高い社会ができるように思えるが、その実情は、Reduceを最上位において、Reuseを進め、どうしても仕方のないときに、Recycleを行うということが、趣旨である。ところが、現実的には、まだまだRecycleが主力な手法になっている。
そもそも循環とは何なのか。循環をさせることが本当に可能なのか。これは、熱力学的な考察から開始せざるを得ない事象である。循環の敵は、エントロピーの発生である。循環に伴うエントロピーの発生とは何か。できるだけ、発生量を抑えた循環を行うには、具体的にどのようにしたらよいのか。
世の中一般では、このような科学的な考察が行われることもなく、リサイクルの可否をコストが掛かるかどうか、経済システムとして成立するかどうか、といった判断基準で行われている。そのために、「リサイクルしてはいけない」といった本が出版され、結構売れたりする。
環境科学が目指すべき道は、実は多様に存在するが、その一つの道として、定量的な記述を行い、環境負荷の増減を定量的に議論できる方法を開発することがあるだろう。
本講義は、リサイクルを題材として、どのようなことが定量的に議論できるかを探
る。