生きることとは何なのか、考えさせられる。人はなぜ生きるのか。いったいどれだけの人が真剣に考えているだろう。一方、どう生きるのか。この問いに悩む人は果たして少ないだろうか。 20代前半の自殺者数が増えていると言う。自殺サイトは盛況で、社会全体が閉塞感に包まれている。若者が希望を持てなくなり、就職をめぐる失意、挫折が死に至る事例が急増しているとのことである。可能性を秘めた若者たちがなぜ。 原因について、精神的脆弱性、「生きる力」欠如など、様々言われている。しかし、理想・目標をもつことを今の若者は求められすぎていると思う。どう生きるか自由に考えられているようで、実は目標達成型人生という一つの生き方の土俵の中で、目標を選んでいるに過ぎない。 大切なのは、今に努める気力と、今を味わう余裕ではないか。自分の明確な目標に向かって今に努めることも大きな喜びだ。ただ、もっと偶然の出会いに身を任せる余裕をもつことができれば、もっと生きることは楽になる。「ルバーヤート」を著したイスラムの詩人オマルハイヤームは、酒をこよなく愛すると同時に、今この時を愛した。風が吹けば桶屋が儲かる。偶然の出会いが偶然の幸運をもたらす。生きることを、なんでも意志で決められると思わずに、身をゆだねるゆとりを持ちたい。 [記事:渡辺善敬(8期)] |