開発援助は,多くの批判に晒されてきた。開発自体が非常に困難かつ複雑で思うような作用を働きかけ難い上に,しばしば政治的な攪乱要因が入り込み,環境問題を始めとする諸問題を引き起こすためと考えられる。 冷戦が終わり,以前よりもまともに途上国の為になる援助が議論できると思われる現在,新たに問題として浮上しているのが,世銀の行動である。近年,世銀は効果のあげやすい国・案件に対して援助を増やしていると指摘されている。巨大な現在の組織を存続させるため,援助の必要性,有効性を訴えねばならないようだ。 世銀[1998]では,政策の良い国において,援助は効果を発揮することを示した論文(Burnside and Dollar[1997](以下BD[1997])を引用し,「政策の良い国にもっと援助を」と主張した。しかしながら,反対に,「政策の良い国」は,援助をほとんど必要としない国々かもしれない。投機対象としても魅力的で,援助以外の資金流入の割合が大きい傾向にあるからだ。BD[1997]の分析は,この点に関してほとんど考慮されていないため,世銀の解釈は適切でないと考える。 世銀や先進諸国は,自らの利害を排除し,途上国を第一に考えた援助を行なうべきだと思う。先進国に非常に依存している途上国共通の性質を作り上げてきたのは,植民地化を行なった先進国に他ならないのだから。 [記事:田中敦子(8期)] |