三郎と四郎のつぶやき


第3回
割り箸って環境に悪いの?ばっくなんばー

 「割り箸から見た環境問題」は1999年3月5日から1999年6月18日にかけて行われた割り箸に関する調査の報告書です。この調査をはじめたときの問題意識は、過去に2回にわたって行われた、割り箸を使ってもいいという主張それに反対する主張の間の論争をどう捉えるのか、ということでした。調査の過程で、問題意識は「割り箸の輸入」というグローバルな問題にまで広がりました。
 この調査の結果は、丸山真人先生のご厚意で、1999年6月18日に東京大学教養学部の講義「環境の世紀」の場で発表することができました。


割り箸から見た環境問題
割り箸って環境に悪いの? 三郎・・三郎  四郎・・四郎

 (食堂にて)

三郎 四郎

 いただきまーす!

三郎

 あれ?四郎、割り箸使わないの?

四郎

 うん。持ち箸してるからね。僕の箸はプラスチック製だよ。

四郎の持ち箸
三郎

 環境に悪いからやってるの?割り箸を使ったからといって割り箸の量なんてたかが知れてるし、環境に悪いとはいえないんじゃない?

四郎

 たしかに現状では、割り箸がプラスチック箸より環境に悪いとは言い切れないなあ。プラスチック箸だってこわれるし、洗剤で洗わないといけないし。だけど、割り箸が今のままじゃよくないっていうのは確かだから、とりあえず持ち箸してるんだ。

割り箸から見た環境問題
割り箸から見た環境問題webページ
三郎

 でも、前に「割り箸は余った木材から作っているから、実は環境には悪くない」って聞いたけど?

四郎

 三郎、それはちょっと違うよ。

三郎

 へ?何が?

四郎

 確かにそのような主張をしている人がいたけど、今はだいぶん状況が変わってるんだ。余った木材、つまり端材からつくられてる割り箸は今ではごく一部で、今では割り箸の90%以上は中国からの輸入品なんだよ。

割り箸輸入量の遷移
割り箸輸入量の遷移
三郎

 中国からの輸入品は端材でつくってるの?

四郎

 いや、そうじゃないんだ。中国の北のほうでは割り箸をつくるためだけに木を切っていて、しかもその伐採方式が皆伐(かいばつ)らしいんだ。

三郎

 カイバツって何?

中国での割り箸生産
中国での割り箸生産
四郎

 皆伐っていうのは森林をいっせいに伐採してしまう方法のことなんだ。しかも切ったあとに植林しないで、そのあとは農地にしているらしいよ。

三郎

 じゃあ、この割り箸のせいで中国の森が壊れているかも知れないんだ。う〜ん。


「使うか使わないか」?
四郎

 さっき言った皆伐とは対照的な伐採方法に間伐(かんばつ)っていうのがあるんだ。これは知ってる?

三郎

 うん。森にいっぱい木がはえちゃうとそれぞれの木に太陽があんまり当たんなくなるから、何本かに1本ずつ木を伐採していくことでしょ。

間伐の図
間伐の図
四郎

 そう、そうすることで森林密度が下がって森の木に十分に日光が当たるようになるんだね。その間伐をして出てくる木の事を間伐材っていうんだよ。この木はまだ小さいから木材としての利用価値は低いんだ。そこで間伐材を割り箸にしようということも行われているらしいよ。コストの問題とかはあるみたいだけど。

三郎

 そうなんだ。じゃあ、間伐材の割り箸は別としても、皆伐して作った割り箸は使わないほうがいいよね。

四郎

 うーん。問題はそう簡単じゃないんだよ。中国での割り箸生産は最初は日本のために行われていたんだけど、最近では中国や韓国とかでも割り箸が流通し始めてるらしいんだ。だから完全に日本が割り箸を使うのをやめたとしても、今度はそれが中国や韓国で使われてしまうかもしれない。しかも割り箸を生産することで生活をしている人とかがいるから、たとえ割り箸を使わなくなって皆伐の問題は解決したとしても、今度は雇用の問題が出てくるよね。

三郎

 あ、そうか・・・。

森林利用の好循環
森林利用の好循環
四郎

 だから割り箸について考えるときに重要なのは、「使うか使わないか」すぐに答えをひとつに決めることじゃなくて、人間社会と森林がどうすれば両立できるのかを考えることなんじゃないかな。「割り箸から見た環境問題」では、そのようなことがほかの問題点にも触れられながら書かれてたよ。

三郎

 う〜。難しい。それを読みながらもっかい考えてみるよ。