「環境三四郎」では、従来から前期課程生を中心に行なわれてきた活動に加え、後期課程生、大学院生、社会人などによる活動も行なわれ始めてきました。また、単にそれぞれが別に活動をするということではなく、異なる年代同士の協力によって活動を進め、環境問題に取り組む人たちのネットワークとしての意味も生まれつつあります。今年は、駒場、本郷に加えた第三の部門としてrc(リサーチセンター)部門が設立されました。
来期の環境三四郎―1年生のみなさん、来期の三四郎をどうしていきたいと考えていますか? 飯田:「学生に何ができるかということを考えています。調査や研究の面では、専門家に及ぶはずはないですけど、身軽に動き出せたり、失敗がある程度許されたりという点では学生の方が有利なんじゃないかと思います。まだ、何をどうすればいいかという具体的なイメージはあまり湧かないんですが、とりあえずの気持ちで第一歩が踏み出せるという身軽さを生かして、勢いを大切に活動していきたいと思っています。」 竹内:「私は、来期はキャンパスエコロジーを中心にやっていきたいと思っています。単にごみを減らしたり、リサイクルを進めたりというように、問題を自明視して対策をこなすのではなくて、問題は何だろうか、あるいはこの場合にリサイクルは適しているのだろうか、そうしたことを調べ、考えながら、取り組んでいきたいと思っています。」 渡辺:「僕は、大学生であることを生かすのは、むしろ外へ出てきた時だと思います。キャンパスの中にいれば、単なる一学生だけれど、いったん外へ出れば何かしたり発言をしたりすれば、大学生が何かをした、大学生が何を言ったということになるんです。僕らが思うよりも、大学生であること、あるいは東大生であることを生かせることがあるんじゃないかと思っています。」 ―キャンパスの外にどんどん出て活動していくことを考えているわけですね? 渡辺:「学生として本を読んだり勉強するのも重要なことですけど、自由な時間を利用して問題の現場に出かけていったり学生の立場を生かして社会に発信したりする活動も有意義だと思います。
竹内:「私も、キャンパスの外へ出ると大学生である立場を活かせるという考えはいいと思います。でも一方で、大学を卒業した後のことを考えると、大学は基礎体力を見につける時期だとも考えられると思うんです。実社会の行政やマスコミに関わる前に、キャンパスの中の学部や学内新聞などと関係しておくというのは非常にいい経験になるんじゃないでしょうか。私にとっては、キャンパスっていうのは、様々な立場の人が手の届く範囲に集まっていて、実践の場としてちょうどいい大きさなんです。そういう意味で、キャンパスエコロジーは重要なのではないかと思います。」 杉山:「竹内さんと渡辺くんの考えは違うようだけど、結構似ているんじゃないかと思います。竹内さんの考えは、全体がある程度見渡せるキャンパスで実際にやってみて学ぶことを将来的に社会に還元していこうというもので、渡辺くんの考えは、とりあえず社会に出て行ってみて、学んだことを今自分の身の回りで起きていることに生かしていこうというものなんだと思うんです。大事なのは、どっちが先かっていう事じゃなくて、ひとつのサークルに、キャンパスから社会を考える人、社会からキャンパスを考える人がいて、いい刺激をし合えるということじゃないでしょうか。」 飯田:「そうですね。リサ市座談会(広報誌前号参照)にもありましたが、キャンパスでの取り組みはひとつの社会実験という意味もあります。それは、実験のための実験じゃなくて、他にそこで得たことを生かしていこうということだと思うんです。フィールドが一つじゃなくて、二つあれば、実験した結果を他のフィールドで生かしてみたり、互いにアイデアをもらったりってことがあるんじゃないかと思うんです。サークルで環境問題をやる意味っていうのは、そういうところにあるんじゃないかと思います。」 ―来期は新しいメンバーを迎え入れることになりますが、新入生を勧誘するに当たっての方針は? 渡辺:「僕は『広げる』ということを重視したいです。環境問題は、研究者とか官僚とかが取り組むだけじゃなくて、いろんな主体が協力してやっていかないとだめですよね。だからできるだけ幅広く巻き込みたいという考えなんです。むしろ全然環境問題に関心のないような人を、どんどん巻き込んでいきたいと思ってます。環境問題への問題意識から入らなくても、『何か面白そう』という楽しさをきっかけとして入ってもらって、最終的には『おっ、なんだ環境問題ヤバイな!』と感じてもらえるようにできればと思ってます。」 飯田:「環境問題について意識のあまりない人を広く巻き込んでいくというのはいいと思いますが、ただそうやって引っ張られる人ばかりでは駄目ですよね。その中に、真剣に問題のことを考えて三四郎の活動を引っ張っていってくれる人も見つけて育てていかないといけないと思うんです。だから、僕はいかに熱く考えられる人を探すか、育てるか、そして将来も取り組んでいってもらえるようにするか、というところで頑張りたいです。」 竹内「少しでも環境問題への関心をもってもらうように広めていくことも必要ですが、同時に、例えば学園祭環境対策でのゴミ分別システムのように、ある程度制度として整えないと駄目な部分もありますよね。そういう制度づくりに取り組むのも環境三四郎の重要な役目だと思います。だから、トップダウン的な取り組みと幅広く巻き込んでいく活動という二本柱のバランスが重要だと思います。例えば落ち葉堆肥化を進める企画については、他の学生にが関わるきっかけや広報がない状態なので、今後は広報やメンバーの募集にも力を入れていきたいですね。」 キャンパスエコロジーについて―キャンパスエコロジーを始めた当初はどんな様子でしたか? 泉「キャンパスエコロジーというのはアメリカで広まっていた運動だったので、最初はそれを日本にも導入するぞという感じでした。ただ、アメリカでは大学が地域とつながっているので『キャンパスから社会へ』という理念に実現可能性があったのですが、日本では大学と地域が隔絶していて状況が全く違う。そこでキャンエコを日本に導入する際に、"大学の中でまず環境負荷削減の実践をして、同時に将来大学を出てからも環境問題に取り組む人材を育てる"というように定義をやり直した部分があります。大学にいる期間内だけで成果を求めるのではなく、大学では精一杯実験をして、将来にもつなげる、という解釈をしていたということです。それにはもちろんテーマ講義のような環境教育や専門性を深化の場というものも含みます。従って、この頃はキャンパスエコロジーを『環境三四郎の活動そのもの』として捉えていました。」 ―今後のキャンパスエコロジー活動についてはどうですか? 竹内「今は、シケプリ対策(注一)、学園祭環境対策、春のリサイクル市、といったようにこれまでに確立してきた活動がいくつもあります。これらをこなすだけでは面白くないですし、潰して新しいことを始めるというのもやりがいあるとは思うんですが、一方でこれまでに未だやり切れていない部分もありますよね。例えばシケプリ対策だったら、『しけぷりをリサイクルして本当に意味があるか』という疑問にちゃんと答えられないのは自分としても非常に歯がゆく感じてます。だから今年は、紙のリサイクルについて勉強会を開いてちゃんと検討してみるとか、リサイクル工場を見に行って現場の話を聞くとかしてみようと。そこまでしても面白くなければ、本当にやめてもいいと思ってます。だから来期は、ちゃんとそういう準備をした上で各プロジェクトに取り掛かって、充実した活ものにしたいと思います。」 今後の『大きな三四郎』について―環境三四郎には現在、幅広い世代の人がいます。各世代はどのように活動に関わっていけるか、その中で前期生はどういう位置にあるかということについてお聞きしたいのですが… 泉「まず、駒場は駒場、本郷は本郷、というようにバラバラに取り組むだけでは限界があると思います。駒場で活動している人と、後期生以上とが協力していくことで、これまでの経験を踏まえた活動や専門性を活かした活動をすることが重要でしょう。駒場で毎年同じような活動をしても、『それを実行する人は違うのだから同じ苦労や経験をしても良いではないか』という考え方もできます。ただやはり、これまでの経験蓄積を少しでも共有することでもっと先のレベルに到達できればと思うんです。特に、最近後期生以上の人が増えてきたので、仕組みさえしっかり作れば(大きな三四郎)そのような関係を構築できる可能性は大きいと思います。」 浦久保「そうですね。僕は来期から後期課程にになりますが、一、二年生の活動で培った経験を三年生以降にぜひ生かしたいし、そうしないともったいないと思ってます。一、二年生の間は駒場での活動を自分達なりに消化することで、プロジェクトの進め方のようなスキルや環境問題の捉え方など基礎体力を身に付けてきました。それを三年生以降は社会の問題に応用していく、というイメージです。僕の場合だと里山プロジェクト(注二)がそれに当たるんですが、そういった社会に向けた活動と専門の勉強とをうまくリンクさせて活動していければいいなと思います。」 徳田「東大の場合、前期生と後期生の一番大きな違いは生活スタイルだと思いますね。専門課程に入ると、前期生のように時間を割いて何かに取り組むというのが難しくなります。でも一方で、前期生の時よりも知識は増えてくるし、問題のツボも見えてきます。だから僕の場合、後期生とか社会人とかになって制約が大きくなってきたときにツボを押さえた活動を効率よくしていくためのステップとして、前期生の活動というものが位置付けられると思います。最初はとりあえず駒場キャンパスという一つの対象について全体像を把握した上で、三年生以降に社会の問題に取り組んでいくというのもいい方法だと思うんです。」 木村「僕も、駒場で活動に打ち込んだことが基礎にあって、そこから経験や考えが発展してきたという感じがしています。でも、もちろん最初から学外の社会問題に取り組んでいくというやり方もありだし、全然まずいとは思いません。むしろ、社会人としてあるいは研究対象として社会の問題に取り組んでいる上級生が関与することで、そういった活動をうまくサポートできればいいなあと思ってます。」 ―では、前期生と後期生以上はどのように手をつないでいけると思いますか? 泉「これまでは、顔の見える関係だけを頼りに、よく言えば臨機応変に、悪くいえば場当たり的に手をつないできたというのが実情でしょう。これをもう少し、組織的にうまく取り持つというのが事務局の重要な役割の1つですが、まだまだ試行期間なので試行錯誤しながら今後の活用を考えていかないといけませんね。」 浦久保「そうですね。下級生からの要求に上級生が応えるという形が一番いいと思うんですが、でも上級生だからこそ見えてくる部分なんかもあるのでそこは率直に話し合っていきたいと思います。僕は今年環境三四郎の事務局長を務めますが、そういう場をつくろうということで事務局でも話し合っているところなので、前期生の人はどんどん活用して要求して欲しいです。」 徳田「学年が離れていると、普段あまり会わないので自分がやりたいことを話し合ったりすることが難しいですよね。それに、専門課程にいるといっても活動のテーマについてそんなに詳しくない場合もあります。だから、無理して上級生と前期生とが一緒に活動する必要はないかもしれませんね。僕は、一緒にやるのも一緒にやらないのも、どちらの形態もあっていいと思います。」 泉「そうですね。また、駒場(1,2年)と上級生といった捉え方だけでなく、活動内容に合わせて必要な人材を集めるといった視点も重要でしょう。例えば、新歓などはもっと上級生も協力してやった方がよいと思いますし、テーマ講義などは当初のように2年生や後期生が主体的に運営するといったことも検討に値すると思います。今後、環境三四郎がどこまで行けるかは、いかに柔軟に問題に対処できるかが勝負でしょう。」 |