リサイクル市はどこに行く

―今年(2000年度)のリサイクル市の感想は?

田中:「予想外にものが集まらず苦労しましたが、当日は思ったより反響があってよかったです。」

大林:「当日を迎えるまでは、どれだけニーズがあるのか分からなくて手探り状態でした。」

田中:「利用してくれる人たちにリサイクルに関する意識をもってもらう手段をあまり考えていなかったので、その点に関しては反省する部分もありますね。」

大林大林:「今回は、リサイクルショップにインタビューに行って、売れ筋とかメンテナンスのやり方について聞いたりもしました。もっと詳しく聞いて実際の活動にも生かせればよかったかなと思います。ショップの方も学生の活動には好意的で、輸送など手伝えるところは手伝ってくれるとの言葉を頂きましたよ。」

―今年のリサイクル市には一部デポジット制が導入されましたが、その意図は?

田中田中:「提供されたものをふつうに売っていたらバザーになっちゃうという意識がありました。そこで、三四郎だったら何ができるだろうか、三四郎にしかできないことって何だろうって考えたんですね。
 今、中古品を使うというのはそう珍しいことではないと思うんですが、安いから粗末に扱ってもいいという意識がでてきているとしたら、それはまったく僕らの意図には反しています。大切にしましょうと人々のモラルに働きかけるだけでなく、家具を大切に使わないと損をするのだという仕組みを作りたかったんですよ。

―大学でリユースのためのイベントをすることの意義とは?

木村:「大学には、新入生が入り、卒業生が出ていく度に多くの家具や家電製品が捨てられていくという現状がありますよね。現状の自治体やリサイクルショップ等がこれをカバーできない以上、サークルがそれに対応する必要はあると思います。
 また大学生は、居住地域との関係が希薄で大学を拠点にしていることが多いので、大学を通じた対策がより効果的だと思いますね。」

田中:「東大の場合、キャンパスが二箇所あったり、学生の住んでいる地区がかなり広域に渡っているなど、大学の中でものをあつめるのも一苦労でした。物質循環をさせる単位として大学を考えていくのは無理があるなあと感じました。地元の自治体などと協力して、地域で回収・循環させていくことも考えていかなくちゃいけないですね。」

徳田:「大学生が使用する家具・家電の量を100 とするとリサイクル市を通じて対策をできるのは2 とか3 くらいな訳ですよね。実際僕がリサイクル市を終えて思ったのは、実際にどれだけのものが回るかではなく、単なるリサイクル活動にどれだけの付加価値をつけられるかということが重要だと思いました。」

―現在のリサイクル市の問題点は

大林:「リサイクル市は、リサイクルをめぐる社会的状況をある程度反映していなくてはいけないと思うんです。
 例えば、現在のリサイクル市は、収支プラスマイナスゼロということになってますが、本当は労働コストをメンバーのボランティアでまかなっています。だから本当に収支が釣り合うための物品の値段はもっと高いはずなんです。これでは社会状況を忠実に反映しているとは言えませんし、利用者が誤った意識をもってしまうかもしれません。
 リサイクル市で得られたことを社会に還元していくならば、コスト意識をもち、利潤は出さないまでも本当の意味で採算が取れるかを検討していく必要もあるのではないかと思います。」

木村:「三四郎そのものが営利組織のように効率第一になってしまってはよくないと思いますが、プロジェクト単位での効率性は考えていく必要があるでしょうね。環境活動は奉仕活動のような文脈で語られることが多いですが、やはりそれだけではいけないですよね。」

―リサイクル市に対する展望は?

沢:「当初は、ただ単純にリサイクル市が全国の大学に広まっていけばいいなあと思っていましたが、今はただやればいいということではなく、どうやるかが非常に重要だなと思っています。法律や中古品市場などの社会情勢を睨みつつ、社会にはいまどのような点が足りないかということを考える必要があると思います。
 例えば、自治体のリサイクル施設の利用者がいないという話を聞いたことがあるのですが、もしかしたらそれは利用できるような雰囲気や楽しさが足りないからかもしれないですよね。だったらリサイクル市で、楽しさをうまく作り出せるようなやり方を考えれば、自治体に参考にしてもらえる訳です。」

田中:「リサイクル市は、一種の社会実験だと思っています。学生がやっていれば、多少の失敗は許されるし、次の年やめてしまっても深刻な影響はないですが、自治体やリサイクルショップなどはそういう訳にはいかないと思うんです。」

徳田:「僕も田中君の意見に賛成ですね。学生は、そういう身軽さを生かして活動をしていくべきだし、そういうことが可能だと思います。さらに大学にいて学問的な知見も得やすい訳ですから社会実験にはうってつけですよね。」

田中:「社会実験が成功しても、例え失敗しても、どちらの結果も社会にフィードバックしていけますよね。実験の過程と結果を広く発信していくことで、社会における蓄積がなされると思うんです。」

木村:「社会実験という視点は、僕も賛成ですね。ただそれと同時に、将来自治体や市場を介したリサイクル・リユースの仕組みはどこまでカバーできるのかということも考えなくてはいけないと思います。自治体の回収が拡大してきても、やはり大学生はその中にうまく入れないかもしれないでしょう。常に埋まらない隙間の物質循環を実際に担っていくということも忘れてはならないでしょうね。」

徳田・木村徳田:「家電リサイクル法が通って、リサイクルに関しては条件が整ってきたけれど、リユースやロングライフ(ものを長く使う)に関しては依然としてかなりやりにくい仕組みがあると思います。例えば、修理すると新品より高くついたり、技術水準に比べ耐久年数を故意に低く設計した製品などがあるのは、個人がリユースやロングライフを実践することの障害になっています。今年一部に導入した家具のデポジット制も、そうした状況を突き崩すためのひとつの実験だった考えています。もうすでに当たり前になってしまったことをするのではなく、新しい環境問題の考え方を提示できたらいいなあと思っています。」

木村:「もちろん新しい取り組みも必要だと思いますが、一方で、地道に身の回りの環境活動を担っていくことも必要じゃないかと思います。」

:「そうですね。身近な矛盾に取り組む姿勢も重要だと思います。例えば、現状では国立大学の施設からでるものを正式に提供してもらうことはできないのですけれど、それってなんか変なことだと思うんですよね。
 東京都の施設も同じようなことがあって、循環型社会に反するのではないかという新聞の投書がありました。そういうなんか変だと思うことを一歩ずつ変えていくというのも大切だと思います。」

コラム 「リサイクル市に思うこと」-前田耕作(1 期)-

 リサイクル市は学園祭と並んでイベント的要素が高いものだと思います。準備する方も物品を提供したり購入したりする方も楽しめるのが良いところだと思います。今後も「楽しさ」を前面に押し出して継続していったら良いのではないでしょうか。
 「リサイクル市に来るお客さんは、環境問題に関心があるというより物を安く買えるから来ているので、あまりリサイクル市をすることでは環境問題への関心の向上にはつながらないのでは?」との考えがあるかもしれません。しかし、僕は、「安く物を買う」あるいは「ある物で済ます」というような所謂「けち」な考え方は、環境にもインパクトが小さい考え方であると思います。リサイクル市を活用することで、節約志向が強まり、結果的に物を大切にする方向に向かっていくのではと期待しています。

リサイクルとは

資源消費を減らすための手段に、
 Refuse (不使用)
 Reuse (再使用)
 Recycle (再利用)
いわゆる3R がある。形を変えて再資源化するリサイクルよりもそのまま使用するリユース、そしてリユースよりもごみを出さないようにするリフューズの方が優先される。リサイクル市の「リサイクル」は、正確には「リユース」のことだが、モノの循環をさせるという広い意味で使っている。

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