A.生物多様性
<生物多様性の価値>
生物がいればどこでもビオトープなのだと言ったところで、満足していてはいけない。森や海などのように成熟したビオトープと、道路のように貧弱なビオトープがあり、それぞれが持つ価値が違ってくるのは事実。では、いいビオトープと呼ばれるための基準は一体何だろうか?その一つの基準として「生物多様性」というものを挙げることができる。「生物多様性」とは、その名の通り生物の種類が豊富なことである。例えば、コイしかいない池とメダカ、ヤゴ、その他水生生物が多数いる池を考えると、後者のほうがより成熟した生態系を形成できていて、良いと言える。
生物多様性をめぐる考えは生態系を守る基本の概念となるので、ビオトープを学ぶ際には是非知ってほしい。この考えを知れば、「ホタルの会」と銘打ってホタルだけに注目した整備が本当に自然にとってよいことなのかどうかがわかるだろう。
<生物多様性のレベル>
例えば、ゲンジボタルにしても関東と関西で光り方が違うと言われているように、地域間で移動が少ない種は、同じ種でも地域間でその形態、生態などが遺伝的に異なっているのである。よって、種だけ守られていればいいとすると、困った事態になるかも知れないのだ。
そこで、生物多様性にはレベルがあって、そのすべてにおいて多様性が守られていることが重要である。
@遺伝子の多様性
A種の多様性
B生態系の多様性
C景観の多様性
これら4つの段階の要素は、一つ下の段階の要素により構成されている。それゆえ、遺伝子の多様性は景観の多様性にまで影響しているということである。