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4月18日後藤則行「プレゼンテーション」
     廣野喜幸「環境問題の常識・非常識 
〜相手の立場に立つ〜」
4月25日佐藤 仁「環境問題と学問の分業」
5月2日大矢 勝「不安をあおる消費者情報の背景
 〜洗剤・化粧品分野を例に〜」
5月 9日城山英明「環境政策決定のディレンマ 
〜規制の単位、情報の不確実性、リスクトレードオフを題材として〜」
5月16日原 剛「アドボカシージャーナリズムとしての環境問題」
5月23日井手 任「人為が育む自然 
〜農村の景観と生き物の関係〜」
6月 6日石見徹「環境と経済」
6月13日安井 至 「環境問題の過去・現在・未来
 〜トータルリスクミニマム思想〜」
6月20日沖 大幹「地球をめぐる水と水をめぐる人々」
6月27日丸山真人「事例研究」
7月 4日梶山正三「本当のゴミ政策へ 
〜循環型社会の虚構〜」
7月 9日小宮山宏「ゆらがない原理」
7月11日最終回ディスカッション

責任教官紹介

責任教官 

後藤 則行 (ごとう のりゆき)

総合文化研究科・教養学部 国際社会科学専攻 教授  
※自分にとって環境問題とは何か  未だに良く分からない。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本(環境問題に関連して) ・レイチェル・カーソン『沈黙の春』  (多少の被害は豊かさ・便利さの副産物と当然のように受け入れてしまう傾向にあっ     たが、目を覚まされた) ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  理系の学生でしたので、何となく数学者か物理学者を夢見ていたように思う(その方面に 関する自分の能力の限界を認める以前)。多少学生運動に参加したりもしたが、人生の目標 を定めきれず時流に流されていたように思う(遺憾ながら)。 責任教官 

丸山 真人  (まるやま まこと)

  総合文化研究科・教養学部 国際社会科学専攻 教授
※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  私にとって環境問題は、まず何よりも公害問題です。私が大学に入学したのは1974年、第 1次オイルショックの直後でした。当時は4大公害裁判に見られたような、企業活動による環 境汚染と住民の健康や生活の破壊が深刻な社会問題となっておりました。庄司光・宮本憲一 著『恐るべき公害』、同『日本の公害』(ともに岩波新書)を読み、衝撃を受けたことを今 も覚えています。また、宇井純先生の自主公開講座「公害原論」もよく聞きに行きました。 私は、企業の利潤追求優先のあり方が環境問題を引き起こしていると考え、その解決のため には資本主義経済の原理をしっかり理解することが必要だと考えて、マルクス経済学の研究 を志しました。その後、玉野井芳郎先生にめぐり合って、広義の経済学の研究をするように なり、生命系という切り口から環境問題を見るようになりました。

講師紹介

4月18日 

廣野 喜幸 (ひろの よしゆき)

総合文化研究科・教養学部 広域科学専攻 助教授 「環境問題の常識・非常識              〜相手の立場に立つ〜」
※講義のイントロダクション  本講義では環境問題の常識と非常識を再考する。しかし、重要なのは、提示されることを ただ鵜呑みにするのではなく、建設的に批判しながら咀嚼することである。常識(common sense)を「知識の惰性態」としてではなく、良識(bon sense)として「生き生きとした智 」という活動態におく姿勢を確立する一助としてほしい。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本など(環境問題に関連して) ・ レオポルド『野生のうたが聞こえる』新島義昭訳、講談社学術文庫(1997)  環境問題がその問題性をあらわにした後で環境問題に取り組むことももちろん非常に重要 である。だが、あることがらの問題性が一般的に受け入れられていないときにその問題性を 提起することは負けず劣らず、いやいっそう重要であろう。こうした先駆性が本書にはある 。まだ環境問題の問題性が隅々にまで精査されていない時代の著作であるので、さまざまな 限界をもってはいる。ここでも本書に建設的な批判精神をもって読み解くことをお勧めした い。 ・辻信一『スロー・イズ・ビューティフル』平凡社(2001)  世はますますめまぐるしくなっている。しかし、環境問題で重要なのは、めまぐるしさに 伴うわれわれの高エネルギー消費文化をエコロジカルなものに変えていくことにあるのでは ないかという感を最近ますます強めている。われわれに必要なのはもっとゆったりと生きる ことなのではないだろうか。あくせくと環境問題に取り組むことは、どこかおかしいのでは ないか。そうした思いをいっそう深めてくれたのが本書である。本書も、そしてレオポルド の本もゆったりと読んでほしい。 ・岸由二『自然へのまなざし』紀伊国屋書店(1996)  「目からうろこが落ちた」という経験で述べた事柄を、強いて環境問題を学ぶうちに求め るとすれば、岸さんの本書と、岸さんとのつきあいにおける片言隻句であろう。 ※自分が受講生の年頃の時は何をしていたか、何を目指していたか  父親の会社がつぶれ、数千万の借金を背負い、また私自身も「五月病」(かような古い言 葉をみなさんはご存じだろうか)にかかり、1年次はそのために休学した。復学以降は、遅 れを取り戻すため無我夢中で日々を過ごしていたように思う。のんびりと日がな一日生物を ながめ、あきたら温泉につかる日々が目標であったし、その目標は今も変わりはない。 ※今、興味をもっていること、取り組んでいること(環境問題に関連して)  「順応管理」を思想の次元でより深く把握すること。 ※講義までに考えてきて欲しいこと  ない。予習が必要であるような話をするつもりはまったくない。講義中に頭脳をフル回転 させること、そこで問題意識を養うことが肝要であろう。 ※学生にできること、また、学生に求めること  複眼的な視点を涵養すること。要するに「他者の立場」に立ってみること。あるいは自己 のあり方を疑ってみること。 ※自分にとって環境問題とは何か  「人はパンのみで生くるにあらず」(『マタイによる福音書』4章4節)。私にとって生を してパンを超えさせるもの。 ※環境問題について学んでいた時に最も「目からうろこが落ちた」という経験  環境問題について最も「目からうろこが落ちた」のは環境問題を学んでいたときではない 。マルクスは『フォイエルバッハに関するテーゼ』で「哲学者たちは世界を単にさまざまに 解釈しただけである。問題なのは世界を変えることなのである」と言った。アガシーは "Study Nature, Not Books!"と述べた。私が目を開かれたのは、こうした言葉と環境問題が 結びつき、「環境問題で重要なのは、現に環境が良好に保たれることである。環境問題栄え て、環境滅ぶ、であってはならない」との発想を確信にまで高めたときである。環境問題に 関心がある者は、自らをいわゆる環境問題という枠から解き放ち、視野をできるだけ広げ、 頭を柔軟にしておくとよい。 4月25日 

佐藤 仁 (さとうじん)

新領域創成科学研究科 環境学専攻 助教授 「環境問題と学問の分業」
※講義のイントロダクション(講義のキーワード)  私たちが何を「問題」として取り上げるかは、私たち誰もがかけているメガネに左右され ます。大学で学ぶ専門分野(ディシプリン)は一つの強力なメガネです。この講義では、複 雑な環境問題を読み解くときに、このメガネがむしろ邪魔になるケースを取り上げ、融合的 な視点から問題を読み解く試みについてお話しようと思います。また、一般にはあまり理解 されていない社会科学の環境問題分析における貢献についても議論したいと思います。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本  最近は、イラク問題に絡めてN.チョムスキーの本を愛読しています。メディアが作るメ ガネが外せなくなってしまうまえに、チョムスキーのメガネをかけてみましょう。 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  はずかしながら、調子に乗って飲んだくれておりました。しかし、同時に、これもお恥ず かしながら、世界を相手に仕事をしたいと考えておりました。 ※学生にできること、また、学生に求めること  環境問題とは非常に重要な意味において社会問題であること、そして、みなさんが何を調 べて何を調べないかの選択も非常に重要な問題であることを理解してほしいと思います。 ※環境問題について学んでいた時に最も「目からうろこが落ちた」という経験  物事の見方、問いの立て方が、単なる知的遊戯にとどまらず決定的に重要であることを教 えてくれたイエール大学のマイケル・ダブ先生の授業を受けたときは目からうろこでした。 彼から学んだものを私なりにまとめなおしたものが、「問題を切り取る視点:環境問題とフ レーミングの政治学」石弘之編『環境学の技法』(東大出版会、2002年)です。 5月2日 

大矢 勝 (おおや まさる)

横浜国立大学 教育人間科学部 助教授 「不安を煽る消費者情報の背景        〜洗剤・化粧品分野を例に〜」 ※講義のイントロダクション(講義のキーワード)  化学物質の人体への毒性や環境影響等に関しては、専門家から一般消費者に根拠のある正 確な情報が伝わることが望まれますが、実際には非科学的な誤情報が幅を利かせています。 今回はその問題の要因と対応策について洗剤・化粧品関連情報を例に考えて頂きたいと思い ます。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本  お勧めは『地球白書 』(光の家協会:毎年発行)を、特に「世界で、また日本で今後ど のような産業・職業が求められるのか?」という視点から読んで頂くことです。 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  研究者を目指して、一生打ち込めるテーマを探していました。 ※いま、興味をもっていること  環境問題に対する関心や行動によって市民はどのように類型化されるか?といった環境に 関する社会心理学的な側面、またそういった個々のライフスタイル・価値観に応じた環境問 題学習法や、求められるべき環境意識・行動はどういうものかという点。 ※講義までに考えてきて欲しいこと  正確な情報が伝わりにくい社会システムでは、環境問題対策にとって何がマイナスになる のかということを考えてきていただきたいです。 ※最も「目からうろこが落ちた」という経験  学生時代に「エントロピー」に関連した環境論に出会った時。個別事象の理解よりも総合 的なバランス型思考を重視する姿勢に変わるきっかけとなりました。 5月9日 

城山 英明 (しろやま ひであき)

法学政治学研究科・法学部 政治専攻 助教授 「環境政策決定におけるディレンマ   〜規制の単位、情報の不確実性、リスクトレードオフ、合意形成〜」 ※講義のイントロダクション  環境政策決定というのは簡単なものではなく、様々なディレンマを随伴するものとなって いる。具体的には、規制の単位をどうするのか(ローカルにするのかグローバルにするのか )、リスク情報の不確実性に対してどのように対応するのか(予防原則に基づいて予防的に 行動するのか、あるいは経済的にも成り立つ後悔しない政策のレベルでのみ対応するのか) 、リスクトレードオフ(あるリスクを減らそうとすると別のリスクが増えてしまうという現 象)にどのように対応するのか、様々な利害関係者(中には将来世代というまだ見ぬ関係者 まで存在する)が存在する中でどのように合意形成を図っていくのか、といった課題を抱え ている。このような具体的ディレンマについて、適宜事例も用いながら論じていきたい。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本など(環境問題に関連して) ・ジャネット・ブラウン他『地球環境政治』有斐閣。  地球環境をめぐる政治に関するバランスの取れた概説書 ・ユージン・スコールニコフ『科学技術と国際政治』  環境問題においても重要な次元を構成する科学技術に関する国際政治に関して、鋭い分  析を加えた本。 ・グラハム『リスク対リスク』  リスクトレードオフについて論じたもの。 ・Lawrence Susskind, "Consensus Building Handbook."  合意形成の手法と課題について包括的に論じた詳細な本。 ※自分が受講生の年頃の時は何をしていたか、何を目指していたか  社会科学や歴史系のゼミに出たり、いろいろな企画をしたりしていた。また、多少芝居も やっていた。 ※今、取り組んでいること ・ 様々な分野の安全問題や環境問題における科学技術と公共政策(法、政治等)の交錯形  態に関する研究と、政策的解を求める際の協働的政策設計手法の研究。 ・合意形成プロセス、政策形成プロセスに関する研究及び社会的プラットフォームの構築。 ・ 様々な政策分野(環境、通信、援助、紛争管理等)における国際機関等による国際的ガ  バナンス、国際レジームの運用に関する研究。 ※環境問題について学んでいた時に最も「目からうろこが落ちた」という経験  科学技術というものは外部から見ているときわめて客観的かつ確実に見えるが、当事者か ら見ると、あたりまえではあるが、いかに不確実でよくわからない点があり、そこに政治的 マニピュレーションが可能であるのかといった点について、理科系の研究者と共同研究して いるうちに体感できた時。また、リスクトレードオフという選択の契機が、環境問題に含ま れているという考えに触れた時。 5月16日 

原 剛 (はら たけし)

早稲田大学 アジア太平洋研究科 教授 「advocacy journalism としての環境報道」
※講義のイントロダクション(講義のキーワード)  1960年代以降の環境報道の変遷とその原因を取材現場から考えたい。客観報道が成立 する条件とadvocacy journalism を生じせしめる社会状況について取材現場から問題を提 起したい。  Key word:objective journalism, advocacy journalism ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本 ・荒畑寒村『谷中村滅亡記』(岩波新書) ・石牟社道子『苦海浄土』(講談社) ・奥野健男『文学における原風景』(集英社) ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  <人間と社会>を課題に自己表現ができそうな方向を漠然と考えていた。ロバート・キャ パの戦場写真に表現されたような極限状態の人間と、同時にその環境を共有し<人間とは何 か>を知りたいと考えていた。 ※今、興味を持っていること(環境問題に関連して) 近代経済学が科学たりうる条件 ※今、取り組んでいること 「中国は持続可能な発展をたどっているか」環境と農業から検証する。 ※環境問題について学んでいたときに最も「目からうろこが落ちた」という経験 『ルーペで田んぼの土やイネをみて、有機農業など分かるのか』 …専門家集団が、田んぼを観察している時のある農民の感想を聞いたとき(山形県高畠町) 5月23日 

井手 任 (いで まこと)

 独立行政法人農業環境技術研究所 研究リーダー  (東京大学・生圏システム学専攻 客員助教授) 「人為が育む自然 〜農村の景観と生き物の関係〜」
※講義のイントロダクション(講義のキーワード)  里地里山の二次的自然の成り立ちを取り上げながら、農村の人と生き物の関係をとらえ直 し、これからの生物相保全のあり方を考える。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本 @学生の頃読んだ本 ・ 林 知己夫著『科学と常識』、東洋経済新報社(1982年)  科学的思考を進める中で、一つに過ぎない原則に囚われない態度の重要性を教えられた  と思う。 ・柳井晴夫・岩坪秀一著『複雑さに挑む科学』、講談社ブルーバックス(1976年) A講義に関連する本 ・武内和彦著『地域の生態学』、朝倉書店(1991年) ・守山 弘著『自然を守るとはどういうことか』、農文協(1988年) ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  地球物理の勉強をしたいと思つつ、自然保護関係のゼミに参加していた。 ※「目からうろこが落ちた」という経験 ・ 農産物を輸入することが、海外から窒素やリンを持ち込んで国土の富栄養化につながっ ているという論に接したとき。(土や水を輸入しているともいえる) ・ 河川流域の低地に分布する水田が、洪水制御する以前のかつての氾濫原にいた生き物の 生息地の代替としての機能をもつという論に接したたき。 6月6日  

石見 徹 (いわみ とおる)

経済学研究科・経済学部 現代経済専攻 教授 「発展途上国の環境問題」 ※講義のイントロダクション  発展途上国で起こっている環境悪化の要因はさまざまであるが、大別すると2つの種類 に分類される。その1つは、先進諸国の経済発展パターンを短期間で経過すること、いわ ゆる「圧縮された経済発展」に原因がある。もう1つは、持続的な経済発展に移行(「離 陸」)する以前の状態から派生するもので、貧困―人口―食糧―環境の悪循環がその一例 である。経済開発を志向する途上国は、一方で近代化した成長部門と、他方での伝統的な 部門とが混在している。一国経済の中でどちらの部門がより大きいかによって、環境問題 の現れ方も異なってくるが、今回は東アジア諸国を例にして講義する。 ※講義のキーワード ・経済発展と成長 ・ 持続可能性 ・ 環境クズネッツ曲線 ・ 後発の利益 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本  お薦めの本はと聞かれると、はたと困ってしまう。学生が、教師に薦められた本を読む かどうか、疑問なのです。それに感動した本なんて、人にめったに言うもんじゃない。初 恋の相手のように、心の奥に秘めておくものです。環境問題に関しては、とくに影響を受 けた本はない。 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  世の中になぜ不公正なことがあるか、不公正をなくすにはどうすればよいか、といった ことを考えていた。いわゆる学園紛争の時代でありました。 ※今、取り組んでいること  現在、「経済開発と環境」というテーマで本を書いている。 ※自分にとって環境問題とは何か  一方では将来の予測にも、他方では世界観や生き方にも関わる、難しい問題です。 6月13日 

安井 至 (やすいいたる)

生産技術研究所 人間・社会部門 教授 「環境問題の過去・現在・未来                   〜トータルリスクミニマム思想〜」
※講義のイントロダクション(講義のキーワード)  そもそも環境問題は何が問題なのか?環境問題は変質した。未だに1970年代の発想 で環境問題に対応していたら大間違いだ。過去を振り返り、そして、未来を予測し、その 間にある現在を理解する。こんな対応が望ましい。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本  最近の環境本としてのお勧めは、「地球温暖化」  http://plaza13.mbn.or.jp/~yasui_it/GWItoBook.htm参照 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  当然、産業公害真っ只中。しかし、環境問題には全く関心が無かった。化学産業が人類 の未来を作ると単純に信じていた。 ※講義までに考えてきて欲しいこと  地球の歴史を1億年ほどざっと振り返り、以下のことを考える。 @人類が地球上に存在しているということの意味は何か。 A人類は最大限、どのぐらい持続できるか。 B人類をあと何年ぐらい持続させるべきか。  ※今、取り組んでいること @ トータルリスクミニマムという考え方が何かを分かってもらうには、最低限、どのよう な情報や知識を伝達する必要があるか。 A環境学というものは、最低限何を教えればよいのか。 6月20日 

沖 大幹 (おき たいかん)

生産技術研究所 人間・社会大部門 助教授 文部科学省 総合地球環境学研究所 助教授 「地球をめぐる水と水をめぐる人々」
※講義のイントロダクション  自然の水循環(地球をめぐる水)とそれに囲まれそれを利用する人間社会(水をめぐる 人々)について簡単に紹介したいと思います。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本 ・T.E. Graedel and P.J. Crutzen "Atmosphere, Climate, and Change" (1995) ・榧根勇、『水と気象』朝倉書店、1989年.ISBN 4-254-16581-1 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  目標を見失っていたが、文理融合的な業務を実社会でやりたいと思っていた。 ※講義までに考えてきて欲しいこと  生きているだけで多大な環境負荷をかけている人間が生きていても良い、と支持できる 環境倫理的論拠。 ※今、取り組んでいること 水を例として、科学技術研究、学術がいかに社会に貢献できるか、あるいはしようとして いるか、またそのせめぎ合い。 ※自分にとって環境問題とは何か  自分と社会を対象とする自分の学問に対して、社会が興味を持ってくれるきっかけをつ くってくれるもの。 ※学生にできること、また、学生に求めること  人の話はうのみにせず疑え。 ※環境問題について学んでいた時に最も「目からうろこが落ちた」という経験  少なくとも一部の本は売れるためにセンセーショナルな話題を取り上げて危機をあおっ ているのだ、と気づき、しかも、新聞や本に書いてあるからといって正しいという保障は 何もないと気づいた点。 7月4日 

梶山 正三  (かじやま しょうぞう)

  弁 護 士 「ほんとうのゴミ政策へ                      〜循環型社会の虚構〜」
※講義のイントロダクション  「循環型社会」は決して我々が目指すべき社会ではない。国が考えている循環型社会は 、資源とエネルギーを浪費し、環境を破壊・汚染するものである。このような時代錯誤の 政策が声高に唱えられている構造を明らかにする。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本  お薦めできる本は少ない。しいて挙げると、 ・ 原田正純『水俣病』 ・ 加藤辿『都市が滅ぼした川』 ・ 嶋津暉之『水問題言論』 ・ ジョン・C・クリッチャー『熱帯雨林の生態学』 ・ 関東弁護士会連合会『北欧の環境戦略と日本』 ・ グループKIKI『どうして郵貯がいけないの』 ※自分が受講生の年代だった頃は何を目指していたか、何をしていたか  将棋部に入り、将棋と化学実験に明け暮れていた。前者では2年生のときに全国制覇、 大道詰将棋にも夢中だった時期もある。将来実務法律家になるなどということは夢想もし なかった。 ※学生にできること、また、学生に求めること  我々の生きている環境が真の意味で危機に瀕していることは、確かな時代認識と鋭敏な 感受性・豊かな想像力がないと理解できないだろう。多くの学者、評論家の説く「環境保 全型社会」は環境の実相も知らず、想像力の欠如がもたらす虚像である。真の環境保全は 、今の人間社会と両立しないことを考えて欲しい。環境問題に熱心な多くのNGOが、官僚 機構を叱咤激励し、立法提言をしたり、ロビー活動を展開することの愚かしさを、諸君に 知ってもらいたい。 7月9日 

小宮山 宏 (こみやま ひろし)

工学系研究科 化学システム工学専攻 教授 「ゆらがない原理」
       ※講義のイントロダクション  「地球持続の技術」(岩波新書)のまえがきとあとがきを読んできて下さい。 ※お勧めの本、影響を受けた本、感動した本など(環境問題に関連して) ・A.ロビンス『ソフトエネルギーパス』 ※自分が受講生の年頃の時は何をしていたか、何を目指していたか  何になろうか考えていました。  スポーツしたり、恋をしたり、悶々としたり多分いつの時代でも同じ若者だったと思い ます。 ※今、興味をもっていること(環境問題に関連して)  解決の具体的手法 ※講義までに受講生に考えてきて欲しいこと  イントロと同じ。 ※環境問題について学んでいた時に最も「目からうろこが落ちた」という経験 ・ A.ロビンスがロッキー山脈の中腹で、石油なしで生活する実験をしてると聞いたとき。    ・Navier-Storesの式がニュートンの法則から導出されると知ったとき。 教官一覧へ