自己紹
皆さんこんにちは。
ご存知かどうか知りませんが、生産技術研究所っていうのはすぐ隣にあるんですけど、
このリサーチキャンパスのどデカイ建物にもう2年間くらい住んでいるのであります。
今日はちょっと題名が違うかもしれませんが、リスクゼロからトータルリスクミニマムへ、環境問題の過去・現在・未来という話でやりたいと思っています。
先ず、皆さんにですね、アンケート用紙を配っていますのでは書き始めてください。
もともと我々が何をやっているのかと言うと、材料とか環境とかをやっていたんですけども、
最近は工学系であるにも関わらずかなり文系的な研究をやってまして、みなさんが環境を判断する時、
一体何を基準にして色んなものを判断してるんだろうかということを研究対象にしています。
そういったことに役に立てたいのでアンケートを書いて下さい。
実を言うとそのアンケートの答えもどれが正しい、どれが正しくないと言うことではありません。ですから正直に書いて下さい。
裏にもあるんですが、1時間20分くらいで私の講義をやめる予定でありますから聞いてから書いてください。
で、6番の問題でありますが、5分じゃ書けないかもしれませんが、講義中にちらちらと眺めながら、
どんなことなのかなと思いながら聞いて頂いても結構です。1分間くらい時間をとりたいと思います。書いて下さい。
(アンケートの内容は講義録の最後に掲載してあります。)
あんまり時間が無いのでぼちぼち始めますね。最初は聞かなくても結構です。先ずは自己紹介。
それから今日使いますパワーポイントのファイルですが、環境三四郎の方にコピーが行ってます。
学生同士でやり取りする分には自由ですので、もしも欲しいというようでしたら、何とか頼んでみてください。
この本は今日の日経の広告に出てましたが、実を言うと6月20日発売ですが、驚いたことに本屋にもう売ってるみたいですね。
『リサイクル〜回るカラクリ止まる理由(わけ)〜』といいまして、一応これ五、七調になってるんですが、そんな本を出しました。
それから最近NHKの『地球大好き〜環境新時代〜』という番組が毎週土曜日の午前11時から、松井君の大リーグ中継が無い日にはありますよね。
したがってこの放送は年間36回行われる予定なんですけど、そこに大体4週間にいっぺんくらい現れます。
松井さんと言うアナウンサーなんですが、コメンテーターがNHKの解説員の小出さんか斉藤さん。
それとあと私と、赤池学さん。その4人で順番にやってます。
最近日本でも少し色んな角度から環境に取り組んでる人が多くなってるので、そういうのをご紹介するという番組であります。
リスクとは何か
いよいよ本題に入ります。とにかく、リスクゼロからトータルリスクミニマムへっていう話ですから、キーワードとしてはリスクであります。
このリスクってのはそもそも何なのか。リスクって言うものはもはや日本語になっているようであります。
しかしながらリスクの意味っていうのは中々難しくて、リスクって定義してみろって言われると結構難しいんですね。
適当な日本語が無いんですよ。それで、そもそも何かって言いますとこういう事です。
先ず被害を受けそうな確立みたいなものがリスクの本当のいみであります。
リスク=危険性×その危険なものに出会う確立であります。
例えば、夜道を歩いていまして危険な暴漢に出会う確立それがリスクであります。
例えば台風なんかですと、台風が大きいほどその危険性は大きいんですけど、こっちに来ないでどこかに逸れてしまえば被害は無いわけですよね。
真正面を襲われれば結構被害はありそうだ、と。リスクの大きさと言うのは、その出会う確立とそのものの掛け算で表現をします。
専門家はですね、危険性とか出会う確立という代わりにこんな言葉を使います。リスク=ハザード×暴露。
ハザードって言うのは危険性の意味なんですけど、例えばある化学物質のハザードはと言ったら、1mg飲むと死んでしまいますとか、2g飲んでも大丈夫ですとか、そんなものがハザードの表現になりますし、それ以外にも色んなハザードがあるわけですね。
やはり同じ暴漢でもナイフを持っているのとピストルを持っているのとではハザードが違うわけですね。
それから暴露。暴露と言うのは出会う確立であります。例えば空気なんかですと、皆さんは一日に15リューベーという量をすっていますのから、その中に入っている物質をどの位取るかというのが暴露であります。
これは、どの位取っているかということで、確立とはちょっと違うのかもしれませんが。
「もし取れば」という事だと言えば確立だということも言える。
リスクと言うのは何に効いてくるのかと言えば、結果として色んなところに出てくるのですが、
一番最終的に本当に深刻なのは命であります。ですから 非常に大きなリスクがありますと、命に対するリスクというのが大きな問題になります。
これはWHO(国際保健機関)のですね、日常的なリスクに対する損失余命と言うものですね。
損失余命と言うのはですね、本来だったらこのくらい生きられるのに、こういう原因によって何故か命が短くなっちゃうという年数です。
単位は年です。これは世界と、日本とオーストラリアとニュージーランドとシンガポールとが入ってます。
1億5千万人分くらいのデータであります。それから北米、それからEU。こういうものの損失余命を書いたものであります。
ぱっと見てでかい数字はどこにあるかと言いますとここにあります。それは何か。世界全体として20.73年と言う命が失われている。
それ何故か。低体重です。要するにカロリー不足。世界全体の平均ですから、例えばアフリカのある地域なんかでは非常に寿命は短いわけですね。
次くらいにそれはでてきますが。それからぱっと見ますと、「危険な性交渉」なんてありますが、これはHIVですね。世界全体で相当な命が失われています。
日本でもゼロではありません。0.23年くらいであります。それからずっとこっちにいきますと、高血圧なんてもあるんですが、それはEUあたりとあんまり変わりませんね。
で、コレステロール。体重オーバーなんていうのもありまして、さっきのは低体重なんですがこっちは体重オーバー。太りすぎで北米なんかですと6.58年とありますから結構命を失っていますね。
で、日本人はあんまりそんなことは無いんですが、それでも2年くらいは体重オーバーで命を失っているという国です。
あとずっと見ていくと不衛生な水っていうところに大きな数字があって、世界中では8年くらい命を失っております。
では日本はどうかって言いますと、0.03年。0.03年っていうと10日くらいですね。10日くらいは水が原因で命を短くしている。
この不衛生な水の大部分と言うのは、多分砒素と感染症だと思われます。それからあと大気汚染が、世界中ではそれほど大きな値ではありませんが、先進国では0.5年くらいと言うことにはなってます。
煙の室内汚染て言うのは5.74年で大きいですね。煙って言うのはけっこう毒物であります。そのくせタバコなんてよく吸うよ、と思いますが、タバコは実際結構大きくて日本でも6年、世界的にも7年、アメリカなんかですと14年くらいタバコを吸うことによって命を短くしています。
煙って言うのは危険なものでありまして、何が危険かって言いますと、本当に色んな物が入っていますから特定できないんですが、中でもホルムアルデヒドみたいなものは危険物でしょう。
ホルムアルデヒドっていうものは防腐剤にもなります。例えば煙で蒸した食品、燻製と言いますが、燻製なんかはなかなか腐りませんが、あれは煙の殺菌作用を使っているわけですよね。
殺菌とか除菌とか防カビとかって言うのは大体毒物なんですね。昔「防菌グッズ」なんてのがあって、皆さん喜んでた時代もあるんですが、はっきり言って細菌よりその防カビ材の方が危険です。
こんなもんでありますが、高血圧・コレステロール辺りっていうのは世界的にもあんまり変わりません。
世界中どこであってもこんな事があるようですね。それから大きく違うのは、環境のところっていうか、水・大気・煙、このへんは汚染物ですね。
やっぱり大きく違うのはこの分野かなということになります。日本というのは後から述べるようにこういう風な状況にある国であります。
それで、寿命がどんなになってるのかと言うと、これは先進国の寿命ということですが、最近は健康寿命というようなことも言われるのですがそれは今日の話題ではないので平均寿命の方でいきます。
そうしますと、日本の女性の平均寿命の84.8年と言うのは世界ダントツトップです。
ほかに、スイスが結構高くて、アイスランドはそんなに高くないんですね。男性の方の77.9というのはですね、アイスランドにちょっと抜かれてしまいました。
まあ、おおよそトップですけど。そのアイスランドと日本で何が違うかといいますと、男女の差なんですね。これがアイスランドで3.2年。日本は6.9年あります。
まあ6.9年くらいあるところも無いわけでは無いんですが、この中では比較的多いですよね。その理由は何かっていいますと、自殺です。それで男性が自殺するんです。
それ今は中高年、50代の自殺が多いかな。自殺の統計なんてのもありますけど、今は3万人くらい自殺していますね。そのうち、何も無くても1万5千人くらいは自殺しちゃうものなんですけど、経済的理由で概ね男性だけが数千人自殺していて、それで寿命が延びないっていう国です日本は。
途上国の状況ですが、最悪なのはザンビアですね。多分、昔は教養学部の先生だった石先生が大使をやっている国であります。
平均寿命が男で36.7、女で47っていう国であります。で、ロシアは非常に特徴的な国でありまして男女の平均寿命差が13.4年もあります。
理由は何でしょう?そうです、ウォッカです。酒の飲みすぎですね。女性っていうのはやはりあまり酒を飲まないようですね。
そういうわけで、寿命っていうのは結構国状を表しているのです。
日本における環境問題
そういう風に日本の環境っていうもを考えてみますと、まあ命だけが問題じゃないんですが、取り合えずみてみようというわけです。
もちろん、日本の環境って言っても日本だけ見てれば良いのかって言ったらそうではなくて、色々な見方があるわけですけど、ちょっと抜かして日本の国内の環境だけを見ましょう。
で、どんな状況かといいますと、多分こんな風です。
これは私が勝手に書いているものでありまして、必ずしも合意があるというものではありません。
どうやって読むかって言いますと、1970年から2050年にかけての約80年間でどんな風に環境が推移してきたかというものです。
例えばダイオキシンがこの辺に固まっているのは、この辺が一番ダイオキシンによる汚染が大きい時期があったということです。
皆さんはダイオキシンといいますと1998年の所沢のダイオキシン問題を思い浮かべるでしょう。
久米さんが「葉っぱものの中にダイオキシンが多いという」事をいって、所沢のホウレンソウが売れなくなったというあの事件の頃ですね。
で、そのあとで「葉っぱもの」というのがお茶であることが分かってですね、「あのホウレンソウは何だったんだ」という事件が起こったのが98年のことでありますが、それはこんなところであります。
実を言いますとダイオキシンの放出起源といいますのは、焼却炉が主要な起源ではありません。
それ以前に、農薬ですとかPCBとして環境中に出てしまったものが結構多いんですね。
それから何とか減っております。それから一応ダイオキシン特別措置法というものが出来て、それで今はかなり減ったと考えても良いかと思います。
それから大気汚染は1970年ごろが最悪でありまして、それからすっときれいになっています。大体10年くらいできれいになっています。
今のレベルとそんなには変わりません。但し、道路の端はそうでもありません。道路の周辺は結構しつこく汚染がありまして、どのくらいでなくなるかという話ですが、石原さんにより今年の10月からディーゼル車の規制というものがかかるんです。
ですが、あんまり効果的ではないと思います。2世代前の規制の車を動かしてはいけないというとんでもない規制で、中小企業の運送業者はつぶれる可能性のあるとんでもない条例を作ったんですが、あんまり効果的ではないと思います。
2005年に世界最強のディーゼル規制というものが日本は出来ますんで、それから恐らくしばらくたつと良くなると思います。
それから環境ホルモン。環境ホルモンについては後で述べますが、あの話っていうのは大体終わったように思います。
さして重要ではないんじゃないかということですが、まあ後で述べます。
それからオゾン層破壊。これは、先進国はもう対策が終わっていますが、中国、ロシアなんかは相変わらず特定フロンなんか作ってます。
それから地球の自定数といって、これは地上で出した物質が大気中に上がるのに時間がかかりますから、上空で分解されてオゾンを破壊するまでには時間がかかるわけです。
それで、2020年くらいがそのピークで、一番大きな穴が開くだろうと言われているわけです。
その後は段々と良くなっていくんじゃないかと思われます。
それから水質・海洋汚染ですが、これが結構しつこいんです。ダイオキシンとかPOPSっていうのはpersistent organic polutantといいまして、難分解性の有機汚染物質でありますが、それがどこへ行ったかと言いますと、土と、川底と海底の泥の中にいます。
そうなってしまうと中々分解されないので、これらは100年、ないしは200年くらいは当分減らないと思います。
で、当然その上に水があるわけですから、水もそう安心できるわけではありません。
河川の水につきましても、農薬ですとか、そもそも農薬だけじゃなく色んな原因がありますので、あまり安心ではありません。
河川水というものの汚染は相当気をつけなければいけまんせん。但し、水道水が危険かというと実はそんなことは無くて、水道水については後で述べますが、日本という範囲においては水道水は最も安全な飲み物です。
最も安全な飲料水です。ミネラルウォーターはどうなんだと思われるかもしれませんが、残念ながらミネラルウォーターの水質基準というのは水道水より5倍くらい緩いんです。
何故か。ミネラルというのはつまり鉱物ですよね、鉱物が溶けていなければミネラルウォーターじゃないからです。
ミネラルといいますと一番問題なのは砒素ですわ。砒素が水道水中のリスクファクターとしては大きいんですけど、水道水中の砒素っていうのはかなり規制がきついんです。
それでも若干リスクファクターとしてはあるんですけど、ミネラルウォーターはそれより5倍くらい緩いんです。
なぜかと言いますと、砒素が溶けてる水って美味しいんですよ。ですから美味しい水を飲みたければミネラルウォーター、安全な水を飲みたければ水道水です。
そう決まっているんですけど皆さんはそうは思っておられない気がします。あとは海洋汚染もなかなかきれいになりません。
これは下水の問題とか色々ありまして、それでも2050年くらいにはなんとか片付くんじゃないかと思っております。
結論は何かと言いますとですね、下の方の資源エネルギー消費ですとか地球温暖化といいますのはこれから先の問題でありまして、まだ問題にはなっているような気がするということです。
温暖化だって何となくこのところ気候が変だって言っていますが別に被害が出るほどじゃありません。
被害がでるとしたら温暖化は100年後でしょうかね。資源エネルギー消費も、被害がでるとしたらやっぱり100年後かな。
まあそんなもんでしょう。だんだん厳しくなりはしますが、現時点では厳しいというほどではありません。
これが本当かという話ですが、少し証明してみようかと思います。
これが大気汚染の過去70年のデータで、平成10年までしかないけれども現在までの推移でありまして、大体こんな風にヒューっと変わっているんですね。
これは二酸化窒素と一酸化窒素ですね。大体大気汚染っていうのは出すものやめてしまうと10年くらいできれいになるものなんです。
それから先は実はあんまりきれいになっていません。道路の脇はこれほどきれいになっていません。じわじわと下がっている状況です。
それというのは我々が便利な生活を求めて、クロネコヤマトをはじめとする宅急便やセブンイレブンのようなコンビニのようなものが出来て、輸送量が莫大に増えているからですね。
輸送すれば当然トラックの量は増えますから空気の方はあんまりきれいにならないということになります。
水のほうですが、こちらは1970年から平成5年までしかありませんけども、環境省が発表した水質基準未達成地域の割合ですね。
ここでは鉛とか砒素とかカドミウムとか亜鉛とか、そういうものが基準を満たさなかったんですけど、まスーッと基準を満たすようになってきて、未だにちょっと満たしていない地域はありますが大体こんなもんです。
最近は環境省もやることがずいぶん変わってきました。最近の行政のやり方では、何か基準を作ろうとしますとパブリックコメントっていうのをとります。
まあ諸君もこういうのに答える機会があったらちゃんと意見を述べてくれるといいんですが、残念なことにもう終わってしまいました。
例えば水環境にアニリンとかフェノールとかの環境基準を今は作ろうとしておりまして、例えば亜鉛ですと全淡水域で30μg/L、海水域が20μg/L、海水特別域が10μg/Lです。
ぱっと見て、どんな意味があるの分からないですよね。恐らくどんな意味があるのか誰も知らないでしょう。
水道水はどのくらいかって比べてみますと、なんと基準値が1000μg/Lです。ですから、亜鉛というのは人間にとってはあまり毒ではないんですね。
毒物なんですけど毒ではない。何故かと言いますと、人間というのは一日に大体亜鉛を30mgくらい取らないと健全に生きられません。
要するに必須元素なんですね。でも、例えば海水域に住んでいる牡蠣、我々は牡蠣を食べると亜鉛を取れるんですよ。
何故か牡蠣は亜鉛を大量に含んでいるんですね。ところが、海水中に亜鉛が多くあると牡蠣はそれを溜め込む習性があって、そのためちょっと多くの亜鉛を溜め込むと亜鉛の毒性ゆえに自分たちが毒になってしまうんですよ。
ですから亜鉛の濃度が高いところですと牡蠣が死んでしまうんですよ。そういう理由があって海水域では基準値を20μg/Lにしなければならない。
例えば工場があったとしますね。工場から亜鉛を含んでる廃水を出してたとします。どうしたら良いでしょうねぇ。
水道水で薄めようと思っても、水道水ってこの基準より50倍濃いんですよ。だから水道水を海水にジャーってあけるとこれは基準違反であります。
そのくらい我々は環境基準というものを厳しくやり始めているのです。もう人間だけのことを考えている時代は終わってるんですよね。それが今の現状であります。
それから神栖。これもなかなか変な話なんですけど、ご存知の通り茨城県の神州町で旧日本軍の毒ガス兵器由来「と思われる」有機砒素事件が起きました。
これは井戸水中に水道水の基準値の450倍の砒素が入っていたというそういう事件であります。
水道水の450倍、ミネラルウォーターだと90倍です。それで3名の小児に完全に発達遅滞が見られました。
要するに歩けなかったりしたんですね。本当に気の毒な状態です。大人も手足の痺れが見られてりで気の毒というしか無いんだけど、実をいうとそこは賃貸住宅で井戸水が供給されていました。
水道は隣まで来てまして、その気になれば引けました。ただ、井戸水は美味しいからという理由で飲んでました。
う〜ん、どういう風に考えるんでしょうねこの問題は。国は4億円という補償金を払いましたがはっきり言って小児の発育遅滞に対して4億円では補償には・・・、ただ補償ではないんですよねこの場合。
美味しいからという自由意志で井戸水を飲んでいたんですよ。こういうのってどう思います。
環境ホルモン問題
それから次は環境ホルモンです。環境ホルモンというのはさっき見せたように変な格好をしています。
要するに問題がワッとおきてヒュっと終わるだろうというそういう格好です。被害というものは多分殆どでなかったと思います。
環境ホルモン問題というのはですね、96年に火がつきまして、97年に日本に入ってきて、98年に環境庁が「SPEED'98」して環境ホルモンとして疑いのある物質リストを発表した。
このリストには大体70個の物質があったんですが、以後ですね、その70個をメディアは「環境ホルモン」として扱いました。
ほったらかしておくわけにはいきませんから、順次その70個の物質のテストを行いました。結局ですね、環境ホルモンとしてクロとなったのは、PCBとダイオキシンであります。
但し、発生時の話です。この間、メカジキとキンメダイにメチル水銀が入っているから妊婦さんは週に二回以上食べない方がいいですよっていう話、結構問題になっていますよね。
普通の人は食べても全く問題無いんですが、妊婦さんの場合は発生時の胎児があるわけです。発生時というのは、例えば神経の発生の時期などは非常に微妙な事が行われています。
何せ、細胞が2個から60兆までいくわけでしょ。それを間違いなく増やしていくなんて全く奇跡ですよ。それが人間の体では行われているわけですよ。
そういうことが行われる際には、こういうものは若干影響があると今でも言われております。
ただ、PCBもダイオキシンも減ってきておりまして、一番濃かったのは1970年ごろであります。
それからトリブチルスズ、これは結構報道されましたね。貝なんかが生殖できなくなるという話だったんですが、貝以外には効かないという非常に特異なものですね。
何故かという話ですが、そもそも人間がトリブチルスズを作った理由というのは、あれは船底塗料といって船のそこに塗る塗料なんですね。
こういうものを塗っておかないと貝がへばりついて抵抗が増えてスピードが出ないんですね。
従って船のそこに何か塗料を塗るわけですが、それは貝に対する毒を塗るわけですね。そのために作られたものですから貝の毒物なんですが、それが毒性があるという話です。
ノニルフェノール、これは女性ホルモン的で魚類を女性化しますが、魚のオスメスとうのは極めて微妙、未分化です。
それで、オスとして生まれた魚に女性ホルモンを与えていきますとメスになるんです。まあ完全なメスではないんですが、元オスなんですがちゃんと卵を産みまして、ちゃんとその卵は孵ります。
ですからやっぱり人間とはちょっと違うんですね。環境ホルモンでは色んな動物が言われていますが、ミシシッピワニという話もありますね。
ミシシッピワニっていうのはやっぱり性が未分化で、卵が孵る時の水温でもって、温度が高いとメスが生まれるんです。
だから、やはり人間とはずいぶん違うんですね。そういうものですから魚類というのは影響を受けやすい生き物であります。
このノニルフェノールというのは工業用の界面活性剤にはよく使われているものなんですが、ただ、普通の川には下水から人間の女性ホルモンが流れ込んでいますよね。
妊婦さんなんかは大量に女性ホルモンを流していますからね。そういうものが流れ込んでいるが故に、ノニルフェノールの女性ホルモン性って言うのは、人間の女性が出している本物の女性ホルモンの代謝物よりも弱いんです。
となると、下水ってそもそも何さっていう話になっちゃいますよね。あと、フタル酸エステル類も魚類だけに効果があるんですが、これはまあいいです。
シロになったものもあります。フタル酸エステルの全て、アルキルフェノールの全てはシロになりました。
フタル酸エステルというのは、柔らかい塩ビにはみんな入っています。バッグや袋なんかも塩ビです。
フタル酸エステルというのは本当にとんでもなく一般的な化合物で、例えばマニキュアなんかにはフタル酸エステルは必須です。
ああいう物が無いと爪が割れちゃったりするんですよ。ほかにも、汗を防ぐものや、あるいは香水の中にもフタル酸エステルは入ってますね。
蒸発速度を下げるためです。まあそんなものですが、概ねシロになりました。それから最初から人以外にも挙がっていたけども「なんじゃこれは。」というものもあります。
現状で環境ホルモンとしてグレーだと言われているのはビスフェノールAです。
これはなかなか難しいんですね。ただ、人に対する暴露はかなり限られています。
昔は缶コーヒーの内側に、エポキシのプラスチックの膜が貼られていて、それからビスフェノールAが溶け出していたんです。
缶コーヒーというのは熱いコーヒーを詰めますよね。それによって溶け出すんです。
しかも冬なんかですと自動販売機の中で加熱されてますから、缶コーヒーの中にビスフェノールAってかなり入っていたんですが、まあどうって事は無いと思います。
10数年前まで水道管の内側にエポキシ樹脂を流し込んでいたんですね。これは、古くなってくると赤錆が出るのでそれをエポキシ樹脂で処理するというものなんですね。
あれって皆さんはものすごい量のビスフェノールAを飲ませされていたんだと思いますけども、だからといって何かが起きたということはなさそうな気がします。
そんなこと言うと「人間って本当に大丈夫か?」と思うかもしれませんが、
実を言うとありとあらゆる生物の中で人間ほど丈夫に出来ている生物って無いんです。
そうじゃなきゃ、地球上にこんな数が蔓延るわけが無いんです。これだけの数が蔓延れるというのは生物として良く出来ているからなんです。
というわけで、色々ありますが「人」っていうのだけ見てみると環境ホルモン問題っていうのはまずあんまり考えなくていいと思います。
唯一ですね、これも後で述べますが、1970年ごろに生まれた男性がちょっと女性っぽいかということが、本当かどうか分かりませんが、あるとしたらあるんですね。
昨年の6月にですね、大分テストが終わった段階で環境省が報道資料としてこんなものを出しました。
環境ホルモンと疑われる物質を色々とテストした結果、フタル酸エステルは通常の毒物として扱うことでよくて、環境ホルモンとして考えなくて良いです、と。
まあ継続中のものも若干あるけどね、という話でした。但しそのときに目くらましとして環境省も色々な事をやるんで、オクチルフェノールがノニルフェノールに続いて二番目の環境ホルモンである事を認定しますという報道資料を出しました。
それに対してメディアはどう対応したかと言いますと、これは読売新聞ですが、社会面に157文字の記事を書きました。
たったのこれだけです。そこで、オクチルフェノールが環境ホルモンの二番目となりましたという事を書きました。
要するに、フタル酸エステルという極めて重要な物質が環境ホルモンではないということを、これはすごく重要なことなんですよ、環境省が作った『SPEED'98』のかなりの部分を否定するということですから、それをメディアはそういう風に報道してくれない。
世の中を安心させるための報道はニュースでないんです。
メディアというのはニュースを報道するんです。真実を報道するわけではないんです。
これは朝日新聞です。朝日は環境ホルモンが大好きで、環境ホルモンというと喜んで書く有名なところなんです。
682文字も費やして色んな事を書いているんですが、どこにも「フタル酸エステルは環境ホルモンとして考えなくていい」ということが書いてないんです。
ですから、はっきり言って誰も知らないんですよ。環境ホルモン問題が終わりかかっているっていう話を。
こんなもんなんですね。フタル酸エステルがどんな物かっていう話をちょっとしますが、さっきも言ったようにありとあらゆる所に入ってる物質なんですね。
しかし、若干の毒性はあります。
環境省が環境基準を作るときにどんな事をやってるかといいますと、これは厚生労働省ですが、塩化ビニル製の玩具の規制というのをこの8月からやります。
DEHPとDINPという2種類のフタル酸エステルを使った、塩ビ製の乳幼児用の玩具の製造・販売が禁止となります。
理由は、フタル酸エステルが若干毒だからです。ただ問題はあるんですね。EUも同じような規制があります。米国にもあります。
ここでは3歳以下のこういう玩具が禁止になっています。何故かと言いますと、マウシングといって、口の中に玩具を入れてしゃぶるからです。
要するにおしゃぶりみたいなやつです。それにDEHPが含まれていたら、当然口の中に入りますよね。
従って規制をしようということなんですが、日本は実をいうと6歳です。6歳の子供がおしゃぶりしますか?このように、日本というのはどちらかというと安全サイドに規制を振りすぎる国です。EUや米国の方が合理的なところで規制を留めようという国です。
厚生労働省の食品衛生分科会というのはですね、こういうことを言いました。
「合成樹脂製のもので、乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちやには、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)あるいはフタル酸ジイソノニルを含有するポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用してはならない。
上記以外の合成樹脂製のおもちやには、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を含有するポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂を使用してはならない。」
これが問題なんですよ。この「玩具」っていうのが要するに6歳までの子供が使う可能性のあるものです。
そうしたらPS2なんかも子供が使う可能性があるから塩ビを使ってはいけないのか?
というのがこの言い方では分からないんですよ。それで玩具業界は今大変なんですよ。
本質は口の中に入れるか入れないかなんです。PS2を口の中に入れるのは結構難しいと思いますが、そういうところで規制がかかるかかからないかが日本は議論される国なんです。
そんな国になってしまいました。ですから、ある意味で日本は非常に安全になりました。安全にある意味ではなり過ぎかもしれないくらいなってるんです。
フタル酸エステルの毒性ってのは色々と調べられていますが、例えば急性毒性でいうとどのくらいかというと、30g/kgですから本当に毒性は少ないですよね。
50kgの人だと1.5kgくらい食べるとちょっとやばいかな、くらいの物質なんですよ。ですから、塩なんかよりはるかに安全です(笑)。
急性毒性にかんしては、ね。
環境に対する認識の違い
でも、皆さんに先ほど聞いたものですが、ようするに「環境の未来はどうだ?」って聞くと、同じ質問を中学校や小学校でやった過去の私の経験からいうと、大体85%くらいの人は「自分たちが今生きてる環境は、親が自分たちくらいの年齢の時に生きてきた環境より悪い」って言います。
なぜでしょうね。それは多分、いろんな問題があって、それが先ほどいったような報道のされ方をしているからでしょう。
真実はほかのところにあるのかもしれません。でも要するにいろんな情報がバランスよく皆さんの判断基準の中に入り込んでいって無いからだと思います。
ダイオキシン
例えばダイオキシンですが、ちょっとデータが古いんですが、大体1970年ごろが母乳中のダイオキシン濃度は高し、血中のダイオキシン濃度も高いような時期でありました。
それからドンドン下がってきて、今ではその時期に比べると随分と下がっています。ですから問題は、1970年ごろに生まれた子供がおかしいかって事なんですよ。
今では33歳ですね。諸君らの兄貴くらいですね。だから、女性っぽいのがいたら怪しいかもしれないぞ。
ダイオキシンのせいかもしれません。まあ女性は問題ないのですが。そんな感じで、それ以降は多分あんまり問題は無いのではと思われます。
このダイオキシンに関しては、増永先生という方の研究があって、これが焼却炉起源なんですが、焼却炉期限に比べると除草剤やコプラナーPCBというものに含まれるものが沢山あるということです。
これは多分正しいだろうという話になっております。ただ、PCBというのは世の中に今は沢山あります。
まだ、貯めてあります。何故かというと、こんな危険なもの処理できない、という判断が多くて処理工場を作るのが大変なんですわ。
それで今、北九州の処理工場が着工されました。着工の際には住民と環境コミュニケーションというものをとって、「PCBとはこういう物質でそんなべらぼうに危なく恐れる物質ではない」という事を伝えたんですね。
例えばLD50といいますが、先ほどの急性毒性の話をすれば1g/kgですから、すぐ死ぬかということに関しては、50gくらい食べても大丈夫なんです。
50gくらい食べると半分くらいの人は死ぬかなという程度のものなんですね。ですから微量でどうこうと言う物ではないんですね。
ところがですね、毎日新聞の福岡版にはこういう記事が出ました。「毒性・発がん性が指摘され、死者300人を出したカネミ油症事件の表面化を契機に、72年からPCBは製造・使用が禁止された。」
それの処理工場が出来たって書いたもんですから住民はまたかなり不安になりました。
PCBはやっぱり毒物ですから全く安全だってわけじゃないんですよ。慢性毒性がありますから慎重にならないといけないのは確かなんですけど、何が問題かと言うと「死者約300人を出したカネミ油症事件を契機に」と書いているところです。
事実は何かというと、カネミ油症事件で死者は出てません。それなのに、毎日新聞の福岡版に記者はこういうことを書いちゃうんです。
何故か。事実を知らないからです。300人っていうのの根拠は何かって言いますと、カネミ油症事件が表面化したのは1968年です。それから31年たってる1999年にある統計が出ています。
その統計って言うのは、1871人だったかそのくらいの認定された患者さんがカネミ油症事件にはいるんですが、1999年までに何人かが亡くなるのは当たり前ですが、その中の約300人が亡くなっているわけです。
その1999年の記事かなんかを読んで、その数を死者と勘違いしてしまったわけです。はっきり言ってそれが新聞記者のレベルです。
そういう世の中ですから逆の事もあって、安全だと言われているけど本当は危険だということだって、もしかしたら報道されていない可能性も無いわけじゃない。
こんなに危険だと言って、実は大したこと無いという報道もあるし。ですから、報道言うのはかなり危ないもんですわ。
それじゃあ、1999年の300人というのが多いのか少ないのかというのが議論になりますね。要するに、カネミ油症で油症患者と認定された人が早く死ぬのか死なないのかという話ですが、これは非常に微妙ですね。
何とも言えない。男性は割りと早く死んでいるんですが、女性はどうも少なそうです。肝臓ガンが割りと多いんですが、ご存知の通り肝臓ガンというのはC型肝炎からなっているものが結構あってですね、ひょっとすると遺伝病、つまりその時期に患者と認定されて検査を受けて血を何回も抜かれたために感染したという可能性も否定できないし、何とも言えないんですね。
世の中、原因と結果というのはそんなにクリアーじゃないんですね。この原因はこれだと言える事は少ない。
とにかく、一目見て分かるほど死亡率は高くありません。特に女性はむしろ長生きしています。
やっぱり人間の体というのは、ちょっと変になったら無茶しないんですね。加えて周りできちんと看てくれてる人がいますから、その辺は何とも言えません。
ディーゼル車
ディーゼルの話もちょっとします。ディーゼルについては日本は大分色んな事を間違えたんですよ。
ディーゼルの規制ってEUと比べますと、NOXの規制は明らかに日本の方がきついんですよ。
EUというのはディーゼルがいっぱい走ってて、日本ではディーゼルが嫌われていますが、PMという黒煙の方は日本は明らかに緩いんです。
なんでEUはPMがきつくてNOXが緩いのかと言いますと、それは法律の書き方によったんです。
これは1975年の規制値を1として、日本におけるNOXとPMの規制値がどのように変化したかのグラフなんですが、ご覧のようにNOXは段々と下がっているんですが、PMはずっと同じだったのが一気に4割に落ちてさらにドスっと落っこちて、2005年には最初の2%くらいの値になるんです。
何を意味しているかと言いますと、PMの方がはるかに危険だったということが今になって分かったわけです。
何でこんなことになったかと言いますと、多分行政的にはNOXの規制値を厳しくしすぎたんです。
それが守れない。守れないと、訴訟なんかを起こされたときに国が負けますから、そうすると規制を下げるんです。
ディーゼルエンジンというのは特性的に燃焼条件を酸性側にするか塩基性側にするかで色んな排気の制御が出来るんですが、PMっていう黒い煙は還元状態だと出て、酸化状態にするとNOXが出るんですね。
ですから両方って言うわけにはいかないんです。どっちかなんです。それで日本はNOXを下げたもんだから、下げると同時に多分PMは増えていってるんです。
そんな行政的な間違いをやったような気がします。何とも言えませんがね。しかし、2005年の規制でもって、明らかにEUを抜いて世界最強の規制になります。
従って、それ以降のディーゼル車が全部を占めるようになる2015年ぐらいになれば大分きれいになってるでしょう。
でも、まだあと10年かはあります。だんだん良くなるでしょうが、そんな状況です。
ガン
それが原因かどうかは分かりませんが、これは日本における肺ガン死の増加を描いたものであります。
悪性新生物っていうのはガンの正式名称ですが、こんな風にガンは増えています。
ガンが増えているということですが、本当にガンが増えてるかということは何とも言えないんです。
何故ならば、これはガンでの死ですよね。今は段々と他のガン以外の病気で死ねない社会に日本はなってきているんですよ。
従って、長生きをしようとすると大体はガンにかかって死ぬ以外は死ねないんですよ。
だから、色々な方に「何で健康でいたいんですか?」って聞くと「ガンになりたくないから健康でいたい。」って言うんですけど、逆効果なんですよ。
ガンになるのが怖かったら早く死んだ方がいいんです。老衰で死ねる人っていうのは大体100人の内で2人ですよ。
だから98人は他の病気で死ぬんですけど、今はガンで死ぬ確立が段々増えてるわけだ。それはそれとして、このようにガンで死ぬ人は増えているけども、ガンの病気そのものが増えているわけでないんです。
他の病気で死ねなくなってるという状況を反映してるんです。それから気管、これは肺ガンですが、それはちょっと多いんですね。
タバコというのは一番のリスクファクターですから、タバコのせいかもしれないんですが、最近はタバコをやめている人も多いし、ひょっとするとPMのせいかもしれません。
これもよく分かりません。要するにですね、何がガンの原因かなんていう話も実を言うと良く分からないのですよ。
これはですね、約15,6年前にやった調査だそうでしてその文献値でありますけども、主婦とガンの疫学者に「何がガンの原因ですか。」っていうのを聞いたものです。
我々も似たような事を調査しておりまして、まだ新しいデータは出てきてないのですが。
その当時はですね、食品添加物が危ない危ないと言われていた時期なんですね。
そうすると主婦の人たちは食品添加物と残留農薬がガンの原因になって危ないというそういう回答をしております。
しかりながらガンの疫学者は、そんなことはなくてタバコと普通の食品だと言っているわけです。
普通の食品って、ガンの原因だと思ってないでしょ?いやいやとんでもない、普通の食品がガンの原因の最大のものです。
世の中には安全な食品と危険な食品があると思ったら大間違いです。危険性がやや少ない食品と、危険性が非常に多い食品の2種類しかありません。
それでも食わなかったら死んでしまいますから、しょうがないから食うわけですよ。じゃあ、天然物なら安全、人工物なら危険というのもとんでもない話で、例えば普通の食品って天然物が多いですよね。
何が危険かって言ったら、例えばカビ毒ですかね。アフラトキシンっていう猛毒があるんですが、これはある種のカビが出す毒物でして、日本には幸いなことにこのカビは生えていないんですが、南の方に生えているカビなので南の方から入る食品、中国もそうでしょうし、アメリカもそうですが、そういうところから入ってくる食品にはみんなこのアフラトキシンは入ってます。
後ででてきますが、これが今の小児ガンの原因のかなりの部分なんじゃないかとも言われています。
こんなもんなんですよ。今同じ質問をしてみますと、さすがに食品添加物だって言う人は減ってきています。
最近食品添加物はそんなに危険じゃなくなってきてますね。
実際我々は、あるものが発癌物質だなんて簡単に言いますが、実際はあるものが発癌物質かどうかなんてものすごく難しいんですよ。
現実には、このくらいしか分かっていません。現在、日本で化学物質と分かっているものは多分数万種類あります。
そのうちのたったの87種類が発癌物質として知られており、かなり怪しいなというのが63種類で、多分怪しいなというのは234種類くらいある。
このぐらいしか分かってません。あとの物質については未知です。ですから本当にリスクがないとはまだ言えません。
それじゃあこの87種類の中に何があるかみてみますと、さっき出てきたアフラトキシンがABC順で書きますと一番上にきています。
ピーナッツ、まあピスタチオの方が出す量は多いんですが、ピスタチオにくっ付いてるカビの出す毒で結構猛毒らしいんですが、アメリカのEPAという機関の報告では、子供が14歳までにガンになる主たる原因はこれだろうと言っているんです。
じゃあ、規制を厳しくすればいいじゃないかと言う話になるかもしれませんが、大体が非常に少ない物質ですから難しいし、そもそも殆どの輸入食品がダメということになってしまうから、まあ出来ないですよ。
今40%しか自給してない日本のような国でこんなものを規制したら食べていけなくなっちゃいますわ。
だからと言っても、私もピーナッツもピスタチオも食うけどどうって事ないわけですよ。
何でそんな事を言うかというと、次々と出てくる物がとんでもない物だからです。
この辺(アスベスト繊維、ベンゼン、X線など)は有名物で、この辺は避けろと言われれば避けられます。
ベンゼンは大気中にも若干あるので微妙ですが、もっとも最近はガソリン中のベンゼンも大分減ってきてますがね。
中性子線も微量なら問題はないし、ダイオキシンもあんまり問題じゃないと思います。
この辺(ヘリコバクター・ピロリ、B型肝炎ウイルス、女性ホルモンなど)は結構原因で、例えば胃がんの原因はヘリコバクター・ピロリという細菌です。
ガンって言うのは実を言いますと遺伝子的にその病気になれるかなれないかっていうのは決まってまして、いくら胃がんになりたくてもなれない人もいるんです。
多分諸君らの6割くらいはそうですね。残りの4割の人は、遺伝子的には胃がんになり得るという感じでしょうか。
それからウイルスですね。C型肝炎はさっきも言った通りです。もっと衝撃的なのは、実を言うと女性ホルモンは発がん性です。
ですから、生存に必要な女性ホルモンが何で発がん性になってきてるんだろう、人間の体ってのは矛盾してるんですよ。
だから、命が長らえるように、ガンにかからないように人間の体ってのは出来てるわけじゃないんです。
要するに、実を言うとガンなどで死ぬことは想定されてなかったんだと思うんですね。
その前に死んじゃうのが当たり前で、今でこそ非常な物質でガンになってしまうと。
もっともですね、微量のものでガンになってるわけじゃありません。ガンの原因の最大のものは活性酸素です。
この活性酸素というのは、我々が呼吸して酸素を吸って細胞の中で代謝を行うことにより毎日100億個くらいぽこぽこ出来てるわけですから、多少お茶を飲もうがビタミンCを摂ろうがダメなんですよ。
結局何が重要かと言いますと、人間というのは先ほども言ったとおり一番良く出来た生物ですから、遺伝子に異常が起きたときにも自分でそれを修復する能力を持ってるんですよ。
その修復能というか、免疫というのを誰もが持ってるわけですね。その免疫というのが大体60くらいから悪くなりはじめて、従ってガンがそのくらいの年齢から増えてくるんですね。
ですからよほどの事がない限り、若い人にガンは少ないわけですが。要はガンなんてのは自分の修復能力を信じるしかないわけですよ。
まあまだそういう結論にいくのは早いかもしれないな。
次に混合物グループ1には発癌物質としてこんなものがあります。アルコール飲料。ビールもウイスキーもだめよと。
昨日ちょっと飲みすぎて今日はちょっと辛いとかそういう話はダメよということです。
鎮痛剤、つまりある種の薬剤はダメですね。コールタール、それから鉱油類。ですから、あんまり油にまみれるのも良くないですね。
塩漬けの魚。それから煤、昔から煙突掃除にはガンが多いって話は有名ですよね。それからタバコ。
それから木、製材業なんかをやっている人はガンが多い。だいたい、太陽の光が発癌物質ですわ。
紫外線ですけど、皮膚がんの原因です。だから例えばですね、健康的に太陽の下で野球でもやって、終わってから「今日はよく打ったなあ。」とか言ってタバコでも吸って、ビールを飲んで、ピザを食べて、アンチョビかなんか食えばもうパーフェクトですよ(笑)。
こういう状況なんだから多少の事を気にしてもしょうがないっていう部分はあるわけ。
もちろん、気にするところは気にして、防げるところは防ぎましょう。でも完璧に防ぐなんて事は出来ないんですよ。
ですからどのくらいで防げばいいのっていう話です。
アクリルアミドっていうのがあります。グループ2Aですから、「多分発癌物質」です。去年、とんでもない事が分かりました。
ポテトチップスの中にこのアクリルアミドがやたら大量に入ってるんです。それまで分からなかったんですよ、偉そうなこと言ってる人間様が。
非常に有毒なもの故に強い神経毒性と発がん性なんて言われてて、ポリアクリルアミドというものは水に使われてて、0.5μg/Lと厳しく規制されていたんですが、なんとポテトチップスには2.5〜3.5μg/gも入っていた。
だから水1Lを飲むよりもポテトチップス一枚の方がやばいという事です。そういう状況です。もしこれが本当なら、年間に1万人くらいガン死してるはずですが、多分してない。
何か間違ってるんですね。だから神経毒性の方がひょっとしたら影響出てるのかもしれない。だから諸君の友達の中で何となくキレやすい人がいたら、その人の食べるポテトチップスの量を分析したらひょっとしたら相関が出るかもしれない。
まあ、ポテトチップスに限りません。ジャガイモの中に含まれるアスパラギンというアミノ酸とデンプンとが高温に加熱されると出来ます。
従ってイモ類全部出ていると考えてよろしい。焼き芋だってちょっとは入ってるし。だから「(リスクを)ゼロにしよう。」なんてのはとんでもない話です。
乳児死亡率
いずれにせよ日本というのは結構すごい事をやった国で、これは約100年間の乳児(1歳未満)の死亡率を示しています。
1000分の200人ぐらい死んでるぞと書いてあります。10分の2、2割です。要するに100年前は赤ちゃんはそんなものだったのです。
10人に2人は1歳未満で死んでたんです。今は1000分の3です。200から3まで落ちました。立派なものです。
死亡率が落ちた最大の理由はもちろん感染症の克服ですが、もう一つは栄養状態です。栄養状態でもって体力はつくわけです。
先ほどから環境がどうのこうの言ってますが、環境が悪かったのは1970年ごろです。ですからその頃にピークでも出てれば何かが言えるんですが、統計的に見て有意なほどでは無いんですね。
もしも本当に統計的に有意な値が出たら大変ですよ。ですから、こういう統計を見てもそれに出ないような状況です。
こちらは死産率ですね。死産というのは人工死産と自然死産と両方入ってます。
理由はしっかり解析しないと分かりませんが、ちょっと第二次世界大戦の後に上がって、最近また落ちてます。
今は大体2万人くらいで、死産率も下がってきてるんですが、昔のように10人に2人とかいう時にはある種の自然淘汰みたいのが行われているんですが、今はそういう状況では全くなくて、唯一の自然淘汰がここで行われているんですね。
ですからここはあんまりいじらない方が、生物としては良さそうな気がします。
それでですね、ここ(67年ぐらい)にぴょこっと角があるでしょ。これはひのえうまっていうものです。
分からなかったら家に帰って調べてください。ということもあってですね、1947年には男が50歳だったのよ。
それが、先ほど言ったように78くらいまでなりました。27年延びてるんですね。50年間で27年延びてるんです。
もしも50年間で50年延びたらその間誰も死ななかった事になるのを考えると、27年寿命が延びるっていうのの凄まじさが分かるんじゃないでしょうか。
日本はそういうことをやってきた国なんです。先ほども言ったように、女性に比べて男性の寿命が延びにくくなってるのは自殺のせいです。
化学物質のリスク
これは化学物質による日本における損失余命を日で表したものです。
これは蒲生さんの力技の研究なんで、あんまり信用しない方がいいんですが、喫煙は日本ではけっこう大きくて大体2700日くらいだって言われてます。
ディーゼルの粒子は14日くらいかなと。それから受動喫煙ってのもけっこうあって、受動喫煙もガンだけじゃなくて虚血性心疾患ってのもあって、これで子供が死ぬってこともある。
だから、やっぱり子供にあんまり煙は吹きかけない方が良いと思いますね。大人になってしまうと、肺がんのリスクは大きくないからどうって事ないんですが、子供における虚血性心疾患は結構あるので、諸君らが親になったら子供の前でタバコを吸わないように。
女性なんかは子供を作るのにタバコは吸わない方が良いと思います。ダイオキシンなんかもかなりタバコの煙から出ますし、タバコの煙ってろくな物が入ってませんから。
それからダイオキシンが1.3日です。従ってもしも、皆さんがダイオキシン嫌だと言ってダイオキシンを完全に取ったとしたら、実際にはタバコを吸っても何しても出るので出来ないのですが、海を浚渫するなり何なりして完全に取ったとしたら、皆さんはあと1.3「日」長く生きられます。
これをやるかやらないかってのが今の日本の状況なわけです。やります?どうします?砒素、例えば水道水中の砒素は0.6日。ミネラルウォータの方が多いから、ミネラルウォーターなら3日くらいですかね。
ですから、いずれにしたって大した事はない。3日早く死んだって上手い水が飲みたい、それはそれでいいよね。
そういうつもりでミネラルウォータは飲んでください。そんなもんですわ。他にも色々ありますけど、いずれにしてもそんなもんだといのが今の日本の現状です。
温暖化
さて、それではこんなものしかリスクは無いのかよという話になりますね。さっきは話してない事がありますね。
温暖化ですわ。実は温暖化もあんまりよくリスクが分からないのです。これは過去の地球の温度変化のグラフですが、実をいうと「過去の地球の温度変化」なんてのを一つとってもちゃんとしたデータは無いんだよね。
大体考えてみると、地球の温度ってどうやって測るの?実際に中々難しいんですよ。一体地球の温度って何なんだろうね。
世界中にくまなく温度計があれば測れるけども、海の上なんて温度計が無いじゃないですか。どうやって測るかという話になります。
ではこういったデータをどうやって計ってるかと言うと、例えば花粉みたいなもので見てるんですね。花粉の化石、例えばこの時代なら平安時代の地層に埋まっている花粉の化石からその時代の植物種を特定して、「ここにはこんな植物が生えていた。
従ってここはこのくらいの気温だろう。」といったことをやっている訳ですよ。だって平安時代の気温なんて測ってないですからね。
ともかく、温度変化はこのようになっている。1800年ごろは低くて、そこから段々と上がっているんですが、東京なんかは大体3度くらい上がってますね。
と言っても、その1.5度くらいはヒートアイランドによるものです。皆さんが一生懸命にエネルギーを使うから世の中が暖かくなってしまう。このエアコンだって世の中を暖めているわけだな。
ここは冷やしているけど。平安時代は温度が低かったが、温度が低い時っていうのは世の中があんまり平和じゃないんですね。
例えば戦国時代はこんな風に温度が低いんですが、平安時代なんかだと小説の中に殺人が出てこない。大体みんな恋かなんかをしてるんですね。
でもこの辺(気温の低い時期)になると人殺しをやっているわけです。何故かと言うと、やはり食べ物の量なんですね。この辺なんかは冷害があったんです。
ですから飢饉、天地天明の飢饉なんてのはここで起きてるんです。大体そういうもので、温度が低い時は人は争いごとをやっている。
こちらはそれよりもずっと前のグラフです。この辺が縄文紀ですね。縄文紀は今よりも少し温度が高い。この辺は氷河期ですが、氷河期と言っても大体今と6度くらいしか違いません。
そうすると6度って言っても結構大きいですよね。但し氷河期といっても東京に氷河があったわけじゃありません。
地球上に氷河は二本しかなくて、日本は多分山岳氷河しかないので6度くらい寒いだけであります。
大して違わない気もしますが、それでもずいぶん違います。6度っていうのがどういう意味を持つかという事なんですね。
最近の温暖化の研究ってのは一生懸命「モデル」というものを作って、そのモデルと観測地(観測地というのもよく分からないんだが)でもって気温の変化を予想している。
これも色んな人の話があるからどれが正しいのか分からないですが。それで、二酸化炭素の放出量に対してたくさんのモデルを作ってけ計算するとこんな風になります(図参照)。
緑の線だったらサチュエーションを起こしているから大体1.2度くらいでおさまるかな。
上の方のやつとか点線なんかはダメだなと。これだともう6度くらい上がってとんでもないなと。
こういう話になるわけですよ。そこで、2度くらいなら何とかなるんじゃないかという事で、グリーンの線がどういう風になってるか眺めてみますとですね、じわじわと2050年くらいまでは世界全体でCO2の放出量を増やしてもいいけどそこから先は減らせというものです。
取り合えず、しばらくは良いかなというシナリオです。とは言っても、後で述べるように先進国はそうはいかないんですが。
これは海面上昇の予想グラフですが、海面上昇はどのシナリオをとってもサチュエーションしないんですね。
何故か。そもそも皆さんは海面上昇の原因を氷が解けるからだと思っているようですが、そうではありません。
山岳氷河は多少溶けますが、南極の氷は増えますし北極の氷は解けたところで海水面に変わりはありません。
じゃあ何で海面が上昇するかと言いますと、海水が膨張するからです。ですから、海水の温度が上がるまで時間が随分かかるということです。
従って、300年くらいは海面が上がり続けるわけです。そしたら300年後には海面は0.6mくらい上がる事になるし、そうなってくるとベニスは危険かなという話になります。
京都議定書と言うものがあって、世界的に色々な合意を取ろうとしているのでありますが、日本はCO2排出量を下げて、アメリカは下げないと言っているのであります。
困ったなと。日本にとっては京都でやってしまったのが運のつきで、昨年の6月4日に批准して今はその批准書は国連の金庫の中に入っていますから「もうヤダ」って言っても間に合わないですよ(笑)
やるっきゃないんですよ。それで、2008年から2012年の第一約束期間で1990年を基準にして−6%にすることになっています。
ですが既に+8%くらいになっていて、そうなるとこれを守るのは大変で、恐らく終わりごろには20%くらいの物を減らさなきゃいけなくなります。そんな事って出来るのかという話になってきます。
でも、やらなきゃいけないのでしょうな。
アメリカは発展途上国?
世界的にみて先ほどのシナリオのように2050年ごろからはCO2の排出量を減らさなきゃいけないのならば、ヨーロッパや日本みたいな国は早く減らさなきゃいけないけどアメリカは暫く待ってやるけどそのうち減らせ、ということになるんです。
中国ももうちょっとだけ待ってやるけどそのうち減らせと。何故かって言うと、これはCO2をどのくらい出してそれでどのくらいのGDPを稼いでいるかという絵なんですが、日本とかスイスとかはこのように右の方にあるんですが、同じ辺りにカンボジアやトップにチャドという国が来ています。これは非にCO2の効率がいい事を示しています。
要するに僅かなCO2でたくさん稼ぐという国なんです。
チャドやカンボジアは工業がないからトップクラスに来ているんです。そこからちょっとでも産業を作ってしまうと中国みたいに左の方へ落っこちてしまう。
ですからどの国も最初は右からスタートするんですが、そこから一気に落ちて少しずつ階段を上ってくる形になるわけです。
アメリカってまだこんな所で、階段を上りきれてないわけです。はっきり言って発展途上国です。
本当にそうなんですよ。さっき言った乳児死亡率を見ても日本は1000分の3、アメリカは1000分の7.6。
女性の平均余命も80いってないですよ。79くらいかな。確かに強い国、一強ではあるけども、色んな指標がアメリカは発展途上国なんですよ。
よって、(CO2排出削減に関しては)暫く勘弁してやるしかないんでしょう。
これからの環境対策
それで、我々はそろそろCO2排出量を下げなきゃいかんのですよ。
今まではどんどんモノを作ってCO2排出量を増やしてGDPを増やしてきたけれど、これからCO2排出量を減らして金を稼ぐにはどうしたらいいかという話になります。
そういう時代になりました。そしたら、やることは唯一つ。軸をもう一本別に、「価値軸」という軸を作ることです。
今まで日本の経済というのは、値段の安いものばかり作って今のデフレを招いているわけだけど、これは馬鹿馬鹿しい。
これからは高い物を少ない資源で作ってきちんと金を儲ける世界を作っていかないと、このシナリオのようにはならないのですよ。
だから、日本がそういう方向に行くためには、我々は色んなものを変えなきゃいかんのですよ。
例えば、こんな例の場合も変えなきゃならん。あるビデオが壊れてしまったとする。修理代は15000円、新品のビデオは20000円で買えるとする。
さあ、どっちにします?今までだったら無条件で新品を買う時代だった。ところが、もしも新品を買ったらどうなるか。
新品というのは非循環なんですよ。資源採取が海外で行われ、製造も中国などの海外で行われ、中国から日本に来て、さっき捨てたビデオはごみになり日本の中で環境負荷になる。
20000円のお金の大部分は海外に行ってしまう。修理の場合はどうか。修理すると輸送の負荷は多少国内にもあるけども、大部分のお金は日本にとどまって、いささか日本にもよくなるかな。
今まで我々はこれ(新品ケース)ばっかり目指してきたから色んなところが変になってしまったけど、そろそろ色んなものの考え方を変えなきゃいけない。
昨年の9月にヨハネスブルグで行われたWSSD(地球サミット)において話題になったのは、「貧困の撲滅」、「持続可能でない生産・消費形態の変更」、あとはアフリカをどうしようという話です。
それから先進国はとにかく生産・消費体系を変えましょうということです。そのために全ての国が10年の事業計画を考えなければいけなくなりました。
例えば車においても、化学物質の管理をきちんとやりましょうとかの話になってます。
そこではsustainabilityというのがキーワードなんですが、sustainabilityとは一体何かという話になります。
確かにsustainabilityとは、経済的・社会的な要因を十分考えた上で持続性を考えていかなければならないんだけど、人の健康というもの以外にも色んな問題があるぞということなんです。
何故かというと、地球というものには2種類の限界がある。一つは生態系の能力の限界。何か変な物質を出した時に処理してくれる能力のことです。例えば諸君らが何かごみを出した時に、まあ多くの場合には東京都が持っていきますが、草むらに残ったとしてもいずれは分解する。
それは生態系の分解能力だ。しかしその分解能力を超えるごみを出したらいつまでたっても分解しないで残っているわけだから、生態系の能力の範囲内で我々の活動を収めないといけない。
資源・エネルギーというのも当然限界はある。結構ふところは広くてたくさんのエネルギーがあるんだけど、まあ限界はある。
この2種類の限界の中で何をやっていくのかということを我々は考えていくのだろう。
今まで人の健康のようなものだけを考えてきたけれど、先ほどのWSSDの話のようにこれ以外にもjusticeとかfairnessみたいなものも考えると、やはり貧困の撲滅のようなものを考えなければいけない。
だから、今まで我々は人間の健康のようなものだけを考えてきたけれど、他にも資源エネルギーとか貧困の撲滅とか生態系の能力とか、すこし広い視野でものを考えていかなけりゃしょうがないですねというはなしになってきた。
先進国と途上国もお互いに考えていかなければいけない。今まで我々は一箇所のみ、今の我々が健康ならそれでいいよ、って言ってきたんだけど、これから先は、例えば次の世代、のことも考えなきゃいけない。
世代間調整論っていいますが、子供のことも考えなきゃいけないということです。
結論
そろそろこの辺で結論に入ります。最初に話したリスク・暴露・ハザードのような事を考えると確かに我々は色んな事をやってきたんだけど、1990年くらいからは次世代のことも考えて、地球のある地域を考えると何か見えてくるでしょう。
温暖化なんかそうですよね。はっきり言って向こう30〜40年くらいは被害なんてないですよ。
少なくとも日本みたいな国は被害なんて殆どありません。現に2003年から日本は生態系リスクを考えた基準を作ろうとしている。
先ほどの亜鉛の規制にしても皆さんがどう思うか分かりませんが、あれもなかなか良いか悪いかが分からなくて難しい。
結局色んな事を考えていくと、ありとあらゆる環境問題はリスク管理だけどそのリスクを受ける主体は我々だけではなく、地球上の全ての人・生態系まで含めるのだ。
そうして将来世代までを含めた全てのリスクをミニマムにするような上手い総合的な発想を持たなければいけない。
それがトータルリスクミニマムというものだろう。だから今までは人だけを考えてきたのだけれど、それを時間軸で広げて範囲も種まで広げて全部を考えなけりゃいかん。
地球って言うのは色んな事が太陽のおかげで起きている。そこに人間が住んで、地球の能力を使って色んな事をしている。
動物も植物もハンバーガーも食べるし、地下から石炭などの資源を採ってきて商売もする、そうして出た煙などの公害も適切な量だと地球が太陽との関係で処理をしてくれるんだけど、今のCO2の問題は残念ながらその能力を越してることになる。
ただ地球上に住んでるのは我々だけでなく色んな人がいる。
熱帯林を切ってパームやしを日本に売るとかしている人もいる。
ただそうするとどうしても生態系も被害を被るからそれも考えなければいけない。
それと同時に将来の世代のことも十分に考えていかなければいけない。このような話がトータルリスクミニマム論です。
こういうことを全部やるにはですね、要するに我々は地球と人間の全てを「ある程度」知らないといけない。
ところが今の学問体系にこのようなものはない。どこかに入って深く井戸を掘るということになっている。
例えば法学で環境を扱うというのは環境学ではなく、法学の中の環境学なんです。
ところが我々は環境というものをダイレクトに取り扱う学問が必要だろう。
何故かというと、今言ったような全部の事を総合的に判断できる人間がそろそろ必要になってきてるからです。
これが出来るのかな、というのが今の状況です。以上で終わります。
(この後、アンケートの裏を記入)
【講義アンケート内容】
≪講義前用≫
問1:(1)〜(3)のいずれかを○で囲んで下さい。
現在の環境の状況は、諸君達の親が大学生であった頃と比べて、
(1)悪くなっている。
(2)大体同じ。
(3)良くなっている
問2:そのように判断した根拠は何ですか(自由記述)。
≪講義後用≫
問3:(1)〜(3)のいずれかを○で囲んで下さい。
諸君達の子供が大学生になる頃の環境は、現在の環境と比べて、
(1)悪くなっているだろう。
(2)余り変わらないだろう。
(3)良くなっているだろう。
問4:次世代の環境を多少とも良くするために、現世代が行なうべきことで、もっとも重要なことは何だと思いますか(自由記述)。
問5:「100年後、500年後、2000年後といった遠い未来の環境がどうなっているか」、を考えるためには、知識、情報、境界条件など、何が必要と思いますか。できるだけ具体的に指摘して下さい(自由記述)。
問5はそのまま6限のゼミのテーマに使われました。
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